カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

最貧困の少女たちを学校に!

2007年04月04日 14時40分03秒 | カンボジアの子ども
少女だけを対象とした奨学金制度


こんにちわ、中川かすみです。今回は、国際子ども権利センターの奨学金支援にも参考になるようなことを知ることができましたので、シェアさせてもらいます。教育機会を与えて貧困家庭の少女をエンパワーメントすることによって、少女たちが人身売買の被害に遭わないようにする目的で運営されているプロジェクトについて紹介します。わたしはそのプロジェクトの評価ミッションの一員として、タイと国境を接するバンテアイミエンチャイ州において、プロジェクトの支援を受けている少女や担当の教員、地方公共団体の職員たちのインタビューをしてきました。このプロジェクトはその背景がとてもユニークなので、まず簡単になぜ始まったかについて紹介します。

今回評価したプロジェクトは、「オペレーション・デイ」と名づけられており、デンマークの高校生が中心になって開始したものです。デンマークでは毎年1日、オペレーション・デイと呼ばれる高校生のための奉仕活動の日が設定されており、その日には学生が学校から外に出て何らかの活動をすることによって、社会奉仕活動のための資金集めをします。参加は強制ではないものの、多くの高校が参加しています。資金集めの活動としては、窓拭き、草刈り、街頭で歌を売う、など高校生が自分たちで考え、とにかくお金を集められればいいそうです。そのオペレーション・デイが2003年に選定した資金集めの目的が「カンボジアの少女たちに教育の機会を!」でした。カンボジア以外では、スーダンやタジキスタンの子どもを対象としたプロジェクトもこれまで実施されており、貧しい国の子どもたちに教育の機会を与えるというテーマが多いそうです。

さて、2003年にデンマークの高校生がその年に集めた資金(7,5百万デンマークコロン,約1億5千万円)は、カンボジアの少女に教育の機会を与えるとともに、少女が自立して生活するために必要な技術を得るため、2004年から2007年まで活用されました(プロジェクトはまだ継続中)。ちなみに、今回の評価ミッションには、デンマークから大学生が1人参加しました。彼女は資金集めをしたときは高校生で、プロジェクト立ち上げのために尽力したので、学生の代表としてプロジェクトの最終評価に参加しに来たのです。

オペレーション・デイプロジェクトは、バンテアイミエンチャイ州で4つの地区を対象として、3つの活動を実施しています。少女への奨学金、少女への技術訓練、そして小学校・中学校の生徒を中心とした若者クラブの活動です。若者クラブは男女とも参加していますが、それ以外は少女のみを対象としたプロジェクトです。プロジェクトを実際に運営しているのはカンボジアの2つのNGO、ポンルーコマー(輝く子ども)とCWCC(カンボジア女性クライシスセンター)です。両団体とも、少女と女性のエンパワーメントを目標として活動しています。

評価ミッションでは、わたしは主に奨学金制度と若者クラブの評価を担当しました。今回は、少女を対象とした奨学金制度について紹介します。奨学金は3年間継続支援となっており、最貧困の少女のみを対象として提供されます。奨学金の内容は、制服、靴、ノート、鉛筆、レインコートなどです。自宅が学校から遠い子どもには自転車も提供されました。また、貧困があまりにも深刻なので、世界食料機構(WEP)にも支援を要請し、米の支援(毎月15キロ)を受けた少女も数多くいます。

このプロジェクトは、少女だけを対象としているため、「男子を差別している」としてプロジェクトそのものが批判されなかったかどうか調査しました。結果は、プロジェクト開始当初はかなり苦情が出たとのことでした。奨学金を受けた少女から、実際に嫌がらせにあった事例を数多く聞きました。たとえば教室内で「奨学金を受けてるお前らはいいなー」と男子生徒から何度も叫ばれた少女はほとんど全員でした。ひどいケースでは、自転車で通学途中に男子生徒に邪魔をされ、自転車ごとひっくり返され、さらにタイヤに穴をあけられた少女もいました。そういった際には「いやな思いをした」ものの、両親や先生に相談した生徒は誰もいませんでした。少女たちは、「黙って耐えた」そうです。つらくても、両親にそれを伝えると両親を困らせてしまうのではないかと少女たちは心配したのです。3年が過ぎて嫌がらせはほとんどなくなったそうですが、今後は奨学金を男子にも提供してほしいというリクエストが保護者や教員からかなり出ました。貧困があまりにも深刻であるため、最初に学校をやめさせられるのが少女であったとしても、その後すぐ男子も退学せざるを得ないからです。


少女たちをエンパワーするために
http://jicrc/pc/member/index.html

写真は奨学金を受けた少女たち

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すばらしい制度 (Nakakoji)
2007-05-30 23:25:00
こんにちは。

「オペレーション・デイ」、
すばらしい制度をご紹介いただきまして
ありがとうございます。

今回は配給額が限られていたようなので、
一番危険に会うだろう少女から優先的に配当されるのは
致し方ないのかなと思いました。
ただ男子から不満が出て嫉妬まであったなんて。
これも致し方ないか。

この制度、日本の高校生にも「ボランティア」という
科目を作って実践し単位を与え、収益金を還元するような
仕組みができればよいなと思いました。
(文科省、なんとかして!)
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