池波正太郎の『スパイ武士道』を読み終えた。何か月か前、アニメの『鬼平』を一通り観たが、池波正太郎の小説を読むのは初めてだと思う。
スパイと武士道。あまりピンとこない単語が一緒に並んでいる。「隠密」といってしまえば、それで終わりな気もするが、面白いタイトルだと思って購入した。
読み始めてすぐ、なんだか人間が生々しいなと感じた。作中でも、この世は相対的なものだ、というようなことが書かれているが、絶対的な人物も物も出てこない。だからだと思うが、後半に行くにつれてなんだかモヤモヤした気分で読んでいた。主人公の虎之助も、主人に忠義を尽くす他の武士よりはスパイらしいけれど、他のスパイたちよりは武士らしい。登場人物は皆それなりに人間的に厭らしいし、愛おしい。スカッとした読了感はないけれど、こういうのも嫌いじゃない。
ところで、最近流行りの漫画やアニメをみていると“分かりやすいもの”が多いのかなと思った。大ヒットアニメ映画となった某ジャンプ漫画では、これまでの常識を覆すくらい地の文で敵味方の心情が書かれているらしい。