空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

オースティン『自負と偏見』(新潮文庫)

2012-01-08 18:07:35 | 読書
久しぶりに「宝塚の原作を読もう」シリーズ。
邦題は「高慢と偏見」のほうがメジャーだと思います。

風邪ひいて引きこもっていたこともあり、約600ページ、一日で一気に読んじゃいました。

18世紀イギリスの作品、地方名士の娘たちと、ロンドンからやってきた青年紳士たちの恋物語。

ときめきました。

もうどうしようってぐらい、ドキドキしっぱなしでした。
(少女マンガとかじゃなく<少女マンガも歴史物とかファンタジーメインだからあまりないけど)小説で、
主役カップルの恋の行方にここまで感情移入してのめり込んだのは、
小学生時代に読んだ『クレヨン王国 月のたまご』(福永令三)とか以来かもしれない(笑)

主人公エリザベス(リジー、エライザ)は5人姉妹の次女。(愛称が2つあるのが読んでてややこしい)
姉のジェーンほど美しくもなく…とか言われていますが、
ジェーンは登場人物中いちばんの美女設定なので、
エリザベスも十分、美貌と、そして才知を併せ持った女の子です。
母親&妹3人が、無教養で虚栄心だけが強い田舎者として描かれている中、
(まあこれは当時の女性教育の問題も大いにあるんだろうけど…)
ジェーンとエリザベスの2人だけが上流階級と対等にやり取りができる存在。
そんな2人が出会うのが、ビングリーとダーシーという2人の紳士。(※苗字)

イギリスの階級社会の描写(弁護士とか商人は「賤しい仕事」なんですよね~)が容赦なく続く中、
エリザベスとダーシーの恋のすれ違いが続いていきます。

…これに、どれだけときめいたか!

200年も昔の異国の人物でありながら、エリザベスという女性の感情移入のしやすさったら!
美貌や才知や財産によって周囲を見下すプライドと、上流階級へのコンプレックス、
自分の過ちを素直に反省できる冷静さ、必要に応じて発揮される行動力、
すごく、かわいい。すごく、カッコいい。
欠点も含めて愛せる主人公です。

そして、ダーシー。
「自負(高慢)と偏見」ですからね、
大金持ちの貴族であるダーシーの高慢な態度ゆえに、エリザベスは彼の人格に対して偏見を持つわけです。
更に、彼を最悪な男だとする話も伝わり、どう頑張ってもハッピーエンドまでは遠そうな感じ。
(ハッピーエンドだという予備知識は、さすがにありました)

その、高慢なダーシーからの超・上からな告白(おまえ、それ告白のつもり!?)と、
キレたエリザベスの拒絶という山場を経て、
事実関係を巡る最大の誤解が解け、
エリザベスに拒絶されたダーシーも、彼を見誤っていたと悟ったエリザベスも、
それぞれに自信を喪失して傷ついた後。

それぞれが反省して、変化するのが凄い。
「誤解が解けてハッピーエンド」じゃないんです。
なぜ、そんな誤解が生じたのか、
ダーシーは自分の「高慢」を、エリザベスは自分の「偏見」をそれぞれ反省し、
その痛手を元に、人間的に成長する。
その結果、そこから真実の愛が生まれ、育まれていく。

王道っちゃあ王道なんでしょうけれども、
2人とも、自分の過ちから逃げない。
立ちふさがる障害に、一つ一つ立ち向かって対処していく。
ダーシーは確かにエリザベスが愛するにふさわしい男だし、
エリザベスはその愛にふさわしい女性だと、読んでいるこちらも納得できて、
それゆえのカタルシス。

「恋愛小説を読んでときめく」という、幸せな追体験。
書かれてから200年経っても、色あせない魅力。
幸せな読書でした。

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