空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

松竹大歌舞伎・二代目中村錦之助襲名披露

2007-09-09 17:18:38 | 観劇(タカラヅカ以外)
地元にあるオペラハウス「びわ湖ホール」には、
毎年、歌舞伎のツアー公演が来てくれます。
去年は中村勘三郎、一昨年は市川海老蔵の襲名披露で、ものすごい人出でした。

今年は二代目・中村錦之助の襲名披露。
先代さん(後に萬屋錦之助)の現役俳優時代って、
遺作となった大河ドラマ「花の乱」しか知らないんですが
(最近CSでの再放送を見て、山名宗全入道に惚れた)
甥にあたられる新・錦之助丈も
台詞を話すとすごく声が似ていて驚きました。

【正札附根元草摺】
「しょうふだつき こんげん くさずり」と読みます。
曽我兄弟の仇討ちをテーマにした舞踊。

 曽我五郎:中村松江/舞鶴:中村梅枝

父の仇である工藤祐経の屋敷に乗り込もうとする曽我五郎を、
舞鶴という女性が止めようとして、
二人で「草摺」という鎧を引き合う様子を描いた踊り。

生兵法なのですが。
歌舞伎には「世界」というものがあるそうです。
「源平の世界」とか「忠臣蔵の世界」とか。
一見、何の関係も無いドラマに見えるけれど、
「実はこの男は赤穂浪士の一人で」みたいに、
既存の(そして暗黙の了解の)世界の設定に繋がっている…みたいな。
この「曽我兄弟の仇討ち」も、一つの世界としてあって、
有名な「助六」とか「外郎売」なんかも曽我の世界の物語だそうなんですが、

「忠臣蔵」とか源平に比べて、背景となっている世界に馴染みがないので
曽我物になると、私は人間関係がさっぱり把握できなくなってしまいます。

曽我十郎と曽我五郎が兄弟で、その二人の父の仇が工藤祐経、
というのだけはわかってるんですが、
たとえば今回の主要キャラである「舞鶴」って何者なの?

去年も顔見世で「寿曽我対面」という曽我ものを見て、そこにも登場してたんですが、
そっちでもこっちでも「小林朝比奈の妹」としか書いてない。
…「小林朝比奈」って、どなたですか?(すみません無知で)
曽我兄弟とはどういう関係なのか、敵なのか味方なのか、
若いのかそうでないのか、検索かけてもさっぱりわかんない(泣)

しかも、今回の解説で知ったのですが、
舞鶴さんって女性ながらに「怪力」設定なのですね。
ますます、…何者?


【番町皿屋敷】

大正期に初演された「新歌舞伎」。
おかげで非常に台詞が聞き取りやすく、面白く見られました。

 青山播磨:中村梅玉/お菊:中村時蔵
 放駒四郎兵衛:中村錦之助/渋川後室眞弓:中村東蔵

番町皿屋敷と言えば、「一枚…二枚…」の怪談。
始まる前に、祖母達は「昔、この怪談を聞いて、井戸のそばを通るのが怖かった」と話していました。
ちなみに私の中では…お菊の霊に見物人が群がる落語「皿屋敷」…
ですが、岡本綺堂作の本作は、お菊が死ぬまでの前日譚で、
宝塚かと思うほどの純愛物語でした。
むしろ柴田作品。いやマジで。

お菊は誤って皿を割るのではなく、
青山がお菊を陥れたのでもなく(落語はそうだった)、
恋仲だった青山に縁談が持ち上がったことで
彼を信じられなくなったお菊が、
「割れば手討」と言われた皿をわざと割ることで
青山の心を確かめようとしてしまう。
最初は笑って許した青山も、試されたことを知って激怒し、
「皿が惜しいのではない」と残りの皿を叩き割ると
奴(彼もお菊に惚れていた?)の制止を振り切って
お菊を斬り、井戸に亡骸を投げ込む。

「家重代の宝も砕けた。播磨が一生の恋も滅びた」

そして自暴自棄になった青山は、町奴の喧嘩に身を投じるべく
槍を抱えて走り去っていく。

もう切ない切ない。
身分違いに悩んで青山の愛を試したお菊も、
結婚も決めていたのにお菊に信じてもらえなかった青山も。
皿を割ったことではなく、心を疑ったことが罪だというのは、
江戸時代には無い近代的な思考かなとも思いますが、
とにかく台詞が美しく、悲恋の世界にどっぷり浸れます。


【戻駕色相肩】

「もどりかご いろに あいかた」。
石川五右衛門と羽柴秀吉がお互いの正体を知らずに
駕籠かきに扮していたという奇想天外な舞踊。
…秀吉の時代に、江戸の廓が京で評判になるようなことは
ないだろうとか、そんな話は歌舞伎では通用しない(笑)

 吾妻の与四郎・実は真柴久吉:中村錦之助
 浪花の次郎作・実は石川五右衛門:尾上松緑
 禿・たより:中村隼人

禿役の子が、少女役なのに身長が高くて、
膝を必死で折ってる様子が大変そうでした……

次郎作役の松緑丈の踊りが大好きで。
今日もしっかり魅せてもらえました。
見得切ったときの目力も。手足の滑らかな動きも。
ほんまに惚れ惚れします。

錦之助丈も、スマートな二枚目で、踊りの動きは
やっぱり素敵でした~


毎年連れていってくれる祖母には感謝してます。
家で歌舞伎の話ができるのも嬉しい。
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