空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

上橋菜穂子『流れ行く者―守り人短編集―』(偕成社)

2008-08-03 15:49:50 | 読書
「守り人」シリーズは、大学時代に「出会えて良かった」と思っている作品の一つです。
いや、贅沢を言えば、本来の対象年齢の頃に出会いたかったけど、それは無理だし。
児童文学研究会に入っていたからこそ、というか。

同様の「幸福な出会い」だと思っているのは、
村山早紀先生の諸作品(特に「シェーラひめ」と「アカネヒメ」)、
それから「今更」ではあるけれども、
カニグズバーグの諸作品、ル-グウィンの「ゲド戦記」あたりかな。
みんな女性作家の作品なのは偶然ではないでしょう。


一応、単行本化されている上橋作品は一通り読んでいるはずなんですが、
「守り人」の世界は私の中でやっぱり別格。
登場人物一人一人がすごく大切で、愛おしい存在。
『天と地の守り人』で描かれた結末には本当に感動して、
バルサやチャグムたちの今後の幸福も祈り続けているのですが。

この『流れ行く者』は、第一巻『精霊の守り人』より以前の話、
カンバル王国の先代国王がまだ健在で、少女バルサと養父のジグロが
その追っ手を逃れて旅を続けていた頃の物語4篇です。
『闇の守り人』ではバルサはジグロを「ジグロ」と呼び、
彼は既にバルサの中で思い出の中の人物になっていたので、
ここでナチュラルに「父さん」と呼んで親子としての2人の生活が描かれている、
それだけで何だか嬉しいです。
彼女がちゃんと愛されて育ってきたことを実感できたから。
だからこそ、バルサがチャグムやカッサたちを愛することができたんだとわかったから。

バルサとジグロの絆を実感したからこそ、
この先に訪れることがわかっている別れが辛く思えてしまうということはあるのですが、
ラストのバルサとタンダを思い浮かべると、幸せな気持ちで
物語を読み終えることができました。

そんなに大きな事件は起こっていないのに、どうしてこんなに面白いんだろう。
『天と地』がきれいに終わった分、続編の希望なんかはしていなかったのですが、
この手の外伝はまだまだ読みたいと思ってしまった。

とりあえず、書き上げてから没になったと聞く、『炎路の旅人』の出版希望。
あと叶うなら、ラッシャローたちの外伝も読みたい…セナとかスリナァとか。

もちろん、上橋さんの純粋な新作も待ってます~。

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