空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

『いだてん』最高じゃんねえ! と『風林火山』

2019-12-23 10:03:58 | 時代劇
大河ドラマ『いだてん-東京オリムピック噺-』が、終わってしまった。
(カテゴリはこれでいいのか、と悩みつつ)

我が愛しの『平清盛』の持つ最低視聴率記録
(実は『花燃ゆ』も同じ数字だと聞いたのだが誰も挙げないので放置しておく)を
軽々と更新してしまった問題作だが、
私のTLでは日曜八時はみんな『いだてん』の話しかしていなかったので、
見ていた人と見ていなかった人は違う世界に生きていたんだなあ、という感想しかない。
こうして世界は分断されていくのだろうか。

語りたくて語りたくて仕方なかった『平清盛』と違い、
『いだてん』は「面白かった」の一言しか言えず、
他人の言語化したものを読んで「違う! そう!」(主人公・田畑の口癖)と
膝を打つことしかできないまま、最終回放送後1週間が経ってしまった。

何だろうか、『平清盛』とか『花の乱』とかが、
「そりゃあ、一般受けは無理だろうよ…」と思うほど私のツボに合致していたのに対して、
(名作でなくて構わない、私は好きだ!という情熱。
最近だと『おんな城主 直虎』も、細かいツッコミ所を「好き」が上回った作品だった)
『いだてん』は非常にテクニカルに作ってあった、という印象で、
ツッコミどころも少なく、クドカン(宮藤官九郎)の手腕に毎回舌を巻く、の連続だった
(これは『真田丸』と印象が近い)ので、「これで視聴率取れないのか…」と頭を抱えてしまう感じ。

思い起こせば十数年前、三谷幸喜の『新選組!』がいろいろ言われていた頃、
「いつか、クドカンの大河ドラマ見たいな~」
「三谷幸喜以上に見る人を選ぶぞ! 無謀すぎだろ」という会話をしたことがあったのだが、
その後、予想もしていなかった朝ドラ『あまちゃん』の大ヒットがあり、
「あれ? 私が思っていたよりも世間の人はクドカン受け入れられるの?」と勘違いしていたので、
「クドカン作品は見る人を選ぶ」というかつての印象を久しぶりに思い出した。
そうだよね、タイドラとかも私は大好きだったけど率悪かったよね…。
(IWGPとか流星の絆とか、原作があればまだ受け入れられてる印象)

「私とクドカン」で自分語りできるほどクドカン作品に通じているわけじゃないけど、
私は正直、クドカンの舞台作品(「蜻蛉峠」とか。「メタルマクベス」見てないや)や
映画(「真夜中の弥次さん喜多さん」「少年メリケンサック」)の場合、
彼の露悪趣味的なところが苦手だったりもする。
その点テレビドラマだと適度に毒抜きされて、
ついでに数か月がかりの伏線回収に大きなカタルシスも得られるので、
それを1年間通して見られたのは非常に幸せであった。

キャストについても神がかったハマり役と名演のオンパレードで、
(あと、新感線の舞台でよく見る皆さんも多かったしね)
見られて良かったと心の底から思う。
特に、森山未來の凄さを毎回のように見せつけられた。
(そして世間では森山君ってセカチューで止まってたりするんですね。意外だった)
いや、事前にはそこまで興味なくて、森山君が出ることすらチェックしてなかったんだけど。

好きだった回は、第13回「復活」、19回「箱根駅伝」、22回「ヴィーナスの誕生」23回「大地」24回「種まく人」、26回「明日なき暴走」、29回「夢のカリフォルニア」30回「黄金狂時代」31回「トップ・オブ・ザ・ワールド」、39回「懐かしの満州」、40回「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、44回「ぼくたちの失敗」、最終回「時間よ止まれ」
…多いな。全体が四部構成でしたが、すべての章の最終回(13回/24回/39回/最終回)が「神」だったのがさすが。

最終回後に #いだてん最高じゃんねえ のタグでファン同士盛り上がれたのも、
良い思い出になりました。いつか再評価される日が来たらいいな。


さて、それと並行して。
2年前に再放送されたのを録画したきりだった、2007年の大河ドラマ『風林火山』を、
産休でできた時間を利用して全話見ました。
もう12年前…このブログに既にあるのが懐かしいですね。

「あ、この人こんな役で出てたんだ」ってのがあったり、
後日譚的な『真田丸』『直虎』を見た後だとまた思うところがあったりしますが、
(今川大河見たい! 『風林火山』と『直虎』でだいぶカバーできてるけど、
今川視点での戦国時代が見たい!)
主人公サイドが清々しいまでに悪どい
ことに大ウケしました。

『真田丸』でもそうでしたが、謀略の描写に「さすが真田汚い」という感想がこぼれ
(この謀略の中心を担っていた村上新悟さんが、『丸』だと真田に苦々しい顔をする側に)
『直虎』で武田に国を焼かれる側視点で見たので、「武田えげつねえなあ…」と実感し…。
小国が必死に生き残ろうとする『丸』とか『虎』と違って、
力ある者が力に任せて我を通すえげつなさを、特にフォローすることなく描き切ったのがすごいなと思います。
…共感しづらいけどな(爆)

それを視聴者に受け入れさせる糸口となるのが、地を這う主人公・山本勘助であり、
武田の犠牲者でありながら自分を貫こうと足掻くヒロイン・由布姫だったのだなと実感しました。
客観的には「幸せな人生」とは言い難いけれど、
力の限り戦い続けて、自分の生き方を肯定して終わる。

とまあ、大仰なことを語りたくなりますが、この物語の肝は、
「活劇」としての面白さ、エンタメ性だったと思います。
「みんなこんなの好きでしょ?」と、とことんチャンバラを見せる。
いかにも時代劇なセリフを吐く。
傑作・名作というよりは、痛快な感じ。
『てるてる家族』も『精霊の守り人』も好きだけど、大森寿美男さんの脚本って、
重厚な「雰囲気」の(実は軽め)エンタメの見せ方が上手いのかなーって。
(軽そうに見せかけて実は重いのが森下脚本『直虎』だと思ってる)
大井夫人とか三条夫人とかリツとか忍芽とか、「男目線で都合の良い女性像」が溢れている
ことにちょっと引っかかりますが、原作準拠の由布姫が、良い感じでノイズに
なっていたな~と思います。

時代が違うとはいえ「よくこのドラマで18%も視聴率取れたな」と思いましたが、
「戦国時代なら何でもOK」な層って一定数いるんですよね。

さて、来年の『麒麟がくる』。
私が明智光秀大好きだったのはもう20年くらい前のことで、
何周か回って「今更別に」だったのですが、池端俊作脚本ということに期待しています。
大津市出身で丹波にもたくさん御縁があるので、そのあたりが盛り上がるのもめでたい。
楽しんで見られますように。

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