イギリス式キッチン―丸ごと料理でいつもキレイ! (だいわ文庫)井形 慶子大和書房このアイテムの詳細を見る |
2006年12月15日 第1刷発行 だいわ文庫
著者は長崎県生まれ。大学在学中よりインテリア雑誌で編集の仕事にたずさわる。26歳で外国人向け情報雑誌「HIRAGANA TIMES」の編集長となる。独立し月間情報誌「ミスターパートナー」を創刊。19歳の時、初めておとずれたイギリスの町並みに魅せられて以来20年間イギリス取材を続けている。
現代のごく普通のイギリス家庭のキッチンを紹介してある。こじんまりとしているが、美しく丈夫そうだ。田舎の家の台所もこういうイギリス風にしてやろう。きっとそうしようと、ここで誓っておくw
アーガ、ディープフライヤーについて。どちらもイギリス家庭の必需品らしい。アーガは電気オーブン。元を正せばスウェーデンのモノ。同時に数箇所で温度別に調理ができるし、ストーブにもなる。黄色や水色で塗られているが、無骨でかなり大きな鉄のかたまりだ。ディープフライヤーは、タプタプと油をたたえた揚げ物器。ハンバーガー屋さんで見かけるポテトフライを揚げる機械と思えば良い。
古い話だがイギリス労働者階級の住宅は、キッチンハウスと呼ばれていたらしい。トイレは地面に穴をあけたもの。火の場所と水の場所は分けられていた。台所は水の場所。今でも洗濯機は台所にある。水を使う作業は汚れ作業として、家の外にあった。風呂はプライベート、洗濯は作業。だから風呂場には洗濯機はない。料理の準備は作業あつかいになる。
トイレは地面に穴をあけたものなのに、風呂はプライベートの空間だ!洗濯はしないぜ!といわれてもな・・・と思ってしまうぞw
水周りと火を使う場所だが、プライベートがどうのこうのというのは後付けで、単に家屋を長持ちさせるため、そうなったのではないかと考える。これは洋の東西どこでも同じことで、水周りを屋内に取り込んでしまうと、排水構造を必要とするため、建物自体の構造が非常に脆く難ありになってしまうことを嫌い、水周りの施設を家の外に出したためだと思う。
労働者階級の家ではないが、永富家を見ていただければ分かるが、水仕事をする場と料理する場は別棟になっている。
箱木千年家。こちらは中世の豪農の家。土間の隅に流しがあるが、水周りの機能はこれだけである。こんな単純な水周りの機能があっただけで、この箇所はジメジメとした場所だったはずだ。
日本の民家の様式に別棟型というのがあって、沖縄県から茨城県まで黒潮に面した地域(九州、四国、近畿、中部、東海、関東)に存在した。形は地方によってそれぞれ特色があるものになる。例えば奈良県の"大和棟造り"もこの形式になる。大和棟造りはとても別棟には見えないが、原型が別棟だ。九州の"漏斗造り"の民家も別棟型の変形。この形の民家は全て水周りの施設が別棟となっている。水周りの機能があると建物が傷みやすい。別棟にしておいた方が修繕や建て替えが楽なのだと思う。
(2009年3月 西図書館)