悪人 スタンダード・エディション [DVD] | |
東宝 |
2010年9月11日の邦画。監督は李相日。出演は妻夫木聡、深津絵里、満島ひかり、樹木希林、岡田将生、他。
不遇な環境で無為に生きる青年が起こした殺人事件、それを知っていながら一緒に破滅への逃避行をする女性の話。
妻夫木聡は土木作業を生業とする青年。祖父母と三人暮らし。荒れるわけでもなく淡々と祖父母の面倒をみる。趣味は車かと見えるが実のところ楽しんでいるわけでもなく無為に日を過ごす。出会い系サイトで知り合った満島ひかりに恋心を抱きつきまとうが、なんの取り柄もない妻夫木聡は満島ひかりから邪険にされる。妻夫木聡の行いは粗暴で無教養で邪険にされて当然のようにも見える。でも金で体を売るような女であっても自分を癒してくれる人への純な想いだけはあった。
満島ひかりは保険の外交員。身を飾り見栄を張ることに自分を見出す。彼女には狙をつけた男性がいる。湯布院の温泉旅館の息子の岡田将生。しかし岡田将生は全く満島ひかりに興味はなくただの遊び相手とも見ていない。満島ひかりを待ち伏せていた妻夫木聡は岡田将生の車に半ば強引に乗り込む満島ひかりを見てしまう。車の跡をつける妻夫木聡。峠道で岡田将生から捨てられた満島ひかりに追いつく妻夫木聡。あなたなんかに助けれたくないと妻夫木聡を振り切る満島ひかり。あげくに、ここに連れてきたのは妻夫木聡だ、妻夫木聡に拉致されたと言い出す。慌てた妻夫木聡は満島ひかりともみ合ったあげく殺してしまう。
深津絵里は紳士服量販店の店員。妹とアパートで二人暮らし。派手で奔放な性格の妹と比べ深津絵里は地味で友人もなく仕事場とアパートを往復する毎日。ある日、アパートに帰ると妹と恋人の逢瀬の場に遭遇してしまう。寂しさと自棄から出会い系サイトを開き妻夫木聡と知り合う。互いに誰かを求めていた。
樹木希林は妻夫木聡の祖母。持病持ちの夫と三人で漁村で暮らしている。実の親から捨てられた妻夫木聡を育てた。ある日いそいそと集会所へ出向く。そこには近所の老人が集まって人の良さそうに見える詐欺集団の売り子を囲み、彼の話術に歓声をあげていた。別の日、町に行く用事があった樹木希林はふと詐欺集団の売り子が教えてくれた住所に寄ってみることにする。そこに待っていたのは顔つきを変えた売り子と強面の男たちだった。
満島ひかりの事件の犯人は当初は岡田将生と見られていたが、妻夫木聡が走査線上に浮かび上がる。追いつめられる妻夫木聡。深津絵里はそのことを知ってしまう。でも彼女はいうのだ。一緒に逃げようと。二人に未来はないかもしれないが刹那の愛はある。それをできるだけ長く続けたい。
この映画で選んだ食事の場面は、妻夫木聡が刺身で飯を食う場面。刺身は樹木希林が魚を捌いて作った。刺身で飯を食べるのが苦手な私は、晩飯で刺身が出てくるたびにこの場面を思い出しながら飯を食べる。
重い題材で登場する人物は誰も幸せにはならないけど、俳優女優陣が皆会心の演技をしていて時を置いて何度も見直している映画。
(2018年7月)