蝉しぐれ (文春文庫)藤沢 周平文芸春秋このアイテムの詳細を見る |
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面白かった。通勤電車の中で読んでいたのだが、久々に降車駅についても電車を降りたくなかった。
成就しない恋なのに鮮やかに完結している、文四朗と福の恋愛物語。こういう恋愛っていうのもあるんだ。風景描写も素晴らしい。
30歳を過ぎたころの一時期、藤沢周平の作品をいくつか読んだことがあった。結婚して子供ができたころ。バブル景気に陰りがみえ始めたころ。自分の仕事は順調ではなく、給料もなかなか思うように上がらない。それでも周りのやつらはバブル景気の余波で家を買ったり、条件のいい会社に転職していったり・・・まあ色々あったころだった。
そんな時期に藤沢周平の作品を読んだのだが、勤め人として身につまされるものがあり、あまり楽しめなかった。それからも何度か藤沢周平の作品を、人から薦められたのだが、私はあまり好みではないと言っていたように記憶している。それが今読むとものすごく面白い。私にも少しは心に余裕ができたということか。
この本を読むきっかけはDVDで映像として観たこと。これ以前に藤沢周平の原作ではないが、人に薦められてDVDで「花よりもなほ」を観て、こういうのも良いなと思い始めた。レンタルショップの棚に並んでいた「たそがれ清兵衛」「蝉しぐれ」、そして新作で置いてあった「山桜」を立て続けに観た。どれも良い作品だった。だから、原作の「蝉しぐれ」を読んだ時は、映像としてのイメージがあったので、ついつい比較してしまうのだが、原作のイメージを全く壊さない映像作品の方も素晴らしいと思う。
もし映像作品の出来が悪ければ、原作には手を出さなかったかも知れない。
(2008年12月 文庫本購入)