東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

根津美術館所蔵の「築島物語絵巻」を観る。

2017年08月02日 | 展覧会(日本美術)
テーマ別展示「舞の本絵巻」
2017年7月13日〜9月3日
根津美術館  展示室5
 
 
   根津美術館では、企画展「やきもの勉強会  食を彩った大皿と小皿」を展示室1・2で開催中である。
 
 
   企画展とは別に、テーマ別展示「舞の本絵巻」が展示室5で開催されていて、根津美術館が所蔵する素朴表現系の物語絵巻《築島》  -日本民藝館が所蔵する《つきしま(築島物語絵巻)》とは別バージョンの絵巻  -が展示されていることを、ある方のブログで知る。
 
 
   2013年の日本民藝館「つきしま  かるかや」展以来、《つきしま》のファンである私、別バージョンの存在自体は知らなかったが、これは見逃してはならぬと、急いで訪問する。本企画展の裏でこういう展示がなされるとは、根津美術館も油断ならないなあ。
 
 
 
   入館即展示室5に向かい、《築島》を観る。ほぼフルオープンの公開がありがたい。
 
 
 
   日本民藝館蔵(以下「民藝本」)も根津美術館蔵(以下「根津本」)も、室町時代・16世紀の作品。
   民藝本が2巻、根津本が1巻である。
 
 
   絵が10図からなるのは同じ、かつ、10図とも全く同じ場面であり、かつ、各絵の基本構成もほぼ同じである。第4〜8図は詞書の挿絵のように小さいことまで同じ。絵巻としての構成がしっかり定まった物語なのですね。
 
 
   違いといえば、根津本に錯簡があること。一番最後にあるべき第10図が第2図の直後にきている。明らかに変。絵巻を最後まで見てから第10図に戻る鑑賞者も見られた。どうしてこんな間違いをやってしまったのか。
 
 
   絵のレベル。
 
   民藝本は、明らかにヘタクソ、というか、素朴表現の王道を征くというか、凄まじいレベル。
 
   根津本は、それよりマトモとの印象。
   第1図「陰陽師に築島の成就を占わせる浄海(平清盛)」だけ見るなら素朴系だとは思わないかも。
   第7図「一人の山人に出会い、兵庫の浦への道を尋ねると、高い所に案内され、周囲の地形を案内される」場面における、岩山・樹木・川・小さな滝などはなかなかの描写である。
   第2図「五万人の人夫により岩山を切り崩し、兵庫の浦に運び、海に沈めようとする」は、民藝版だと、説明なしには何の場面か全く分からないが、根津版であれば想像できる範囲である。


   ただ、根津本も、基本は民藝本の素朴表現・描写法と同じであり、民藝本以上に炸裂している箇所もある。
   例えば、第3図の「人柱とするために捕らえらた旅人を閉じ込めている牢屋(檻)」の描写なんて凄い! (美術館側もここがイチ押しのよう。)
 
 
(根津本第3図部分)
根津美術館公式Twitterより
 
 
(民藝本第3図部分) 
 
 
 
 
   《築島》を満喫させてもらう。
   
   展示室5では、他にも2点の絵巻《静》室町時代・16世紀と《高館》江戸時代・17世紀が展示されている。
 
    関心のある方はお見逃しなく。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。