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【画像】キュビスム展のレジェ、ドローネー、クプカ、シャガールなど - 「キュビスム展 美の革命」(国立西洋美術館)

2023年12月18日 | 展覧会(西洋美術)
パリ ポンピドゥーセンター
キュビスム展 美の革命
2023年10月3日〜2024年1月28日
国立西洋美術館
 
 
 本展は、ポンピドゥーセンター所蔵作品に、国内所蔵作品を若干加えて、作品112点(初来日が50点以上)と関連資料29点により、1907年から10数年で終焉を迎える芸術運動「キュビスム」の展開を追う。
 
【本展の構成】
1 キュビスム以前ーその源泉 
2 「プリミティヴィスム」
3 キュビスムの誕生 - セザンヌに導かれて
4 ブラックとピカソ - ザイルで結ばれた二人(1909–1914) 
5 フェルナン・レジェとフアン・グリス
6 サロンにおけるキュビスム 
7 同時主義とオルフィスム - ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー 
8 デュシャン兄弟とピュトー・グループ
9 メゾン・キュビスト
10   芸術家アトリエ「ラ・リュッシュ」 
11   東欧からきたパリの芸術家たち
12   立体未来主義
13   キュビスムと第一次世界大戦 
14   キュビスム以後
 
 
 以下、特に見た画家の作品を挙げる。
 
 
アンリ・ルソー(1844-1910)
 
《熱帯風景、オレンジの森の猿たち》
1910頃、個人蔵
 
 撮影不可。ルソーの大サイズのジャングル画が日本に所在するとは驚き。個人蔵なので見る機会は限られるだろうが、2006年の世田谷美術館「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」展に出品されていたようだ。オレンジの羅列と猿たちがキュートな装飾画。
 
 
 
 この一画は、私のツボ。
 
 
ジョルジュ・ブラック(1882-1963)
 
《大きな裸婦》
1907年冬-08年6月、ポンピドゥーセンター
 
 ピカソ《アヴィニョンの娘たち》を見たブラックは、その過激さに驚き、こう語ったという。
「まるで麻くずを食べるか、石油を飲んで火を吹けと言っているようだ!」
 何を言いたいのかさっぱり分からない。言いたいことを日本語らしい表現に直すとしたらどんな表現になるのだろう。
 本作は、ピカソへの応答として描かれたという。 
 
 
 ブラックの1908年制作の「レスタック」風景画3点が並ぶ展示風景。
 
 
 
マリー・ローランサン(1883-1950)
 
《アポリネールとその友人たち(第2バージョン)》
1909年、ポンピドゥーセンター
 
 本作は、ローランサンがモンマルトルの共同アトリエ「洗濯船」で出会った仲間たちを描いた集団肖像画。
 中央が詩人ギヨーム・アポリネール。ローランサンの当時の恋人。ピカソとその当時の恋人、さらに愛犬、そして画面右下には、青いワンピースを着たローランサン自身が描かれる。
 
 
 
 大型作品3点が並ぶ展示風景。縦が同じサイズに見える(実際は257〜269cm)。
 
 
フェルナン・レジェ(1881-1955)
 
《縫い物をする女性》
1910年、ポンピドゥーセンター
 
《婚礼》
1911-12年、ポンピドゥーセンター
 
 円筒形(チューブ)を多用した独自の表現によってキュビストではなくチュビストとも呼ばれたレジェ。
 本作は、街中を行進する結婚式の行列が描かれる。中央にピンクがかったドレス姿の花嫁とタキシード姿の花婿。人々の手や頭部の断片が二人を取り囲む。いったい何人の人物が描かれているのだろう。
 
《形態のコントラスト》
1913年、ポンピドゥーセンター
 
《タグボードの甲板》
1920年、ポンピドゥーセンター
 
 
 
ロベール・ドローネー(1885-1941)
 
《パリ市》
1910-12年、ポンピドゥーセンター
 
 画面の左右にはパリの町とエッフェル塔、中央には古典的な三美神を思わせる裸婦が描かれる。
 エッフェル塔はロベール自身の作品の引用でもあり、また左側の船と橋のモティーフは、敬愛するアンリ・ルソーの自画像から取られたものだとのこと。
 
ロベール&ソニア・ドローネー展示風景
 
 
 
フランティシェク・クプカ(1871-1957)
 
《色面の構成》
1910-11年、ポンピドゥーセンター
 
《挨拶》
1912年、ポンピドゥーセンター
 
 オーストリア=ハンガリー帝国領の東ボヘミア(現チェコ)生まれ。1896年にパリに移る。
 絵画における運動の表現を追求する。
 前者は、女性のシルエットの動きが、帯状の色面の連なりによって表される。
 後者は、二人の人物のお辞儀をするような動きの軌跡が、鮮やかな色彩によって連続的に捉えられる。
 
 

マルク・シャガール(1887-1985)

《婚礼》
1911-12年、ポンピドゥーセンター
 
 1910年にパリに移住し、キュビスム周辺の詩人や美術家たちと交流を始めた頃の作品。
 空、地面、家屋の屋根。その色彩が素晴らしい。
 
《ロシアとロバとその他のものに》
1911年、ポンピドゥーセンター
 
《白い襟のベラ》
1917年、ポンピドゥーセンター
 
《墓地》
1917年、ポンピドゥーセンター
 
《キュビスムの風景》
1919-20年、ポンピドゥーセンター
 
 1914年に一時帰国し、戦争の勃発によって1923年までパリに戻れなくなるが、その間もキュビスムの言語を自作に取り入れ続ける。
 
 
 
 本展は、キュビスムの時代、1910年代・その前後の10数年間に制作された作品ばかりが並び、キュビスムの百花繚乱に触れることができる貴重な展覧会。
 
 本記事は私的に好みの画家を挙げた。私的トップ3作品は、ローランサン、レジェ《婚礼》とシャガール《婚礼》。
 ただ、本展は、個別の作品・画家というよりも、芸術運動自体を味わう企画。


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