国宝 東寺 ー 空海と仏像曼荼羅
2019年3月26日~6月2日
東京国立博物館
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東寺展を会期中盤に訪問する。
【本展の構成】
第1章 空海と後七日御修法
第2章 真言密教の至宝
第3章 東寺の信仰と歴史
第4章 曼荼羅の世界
東寺の至宝盛りだくさんのなか、お気に入りは第2会場の第4章「曼荼羅の世界」の仏像曼荼羅。
1 お気に入り・その1
重文
《五大虚空蔵菩薩坐像》5体
中国 唐時代・9世紀
空海の孫弟子・恵運が持ち帰ったという「中国で造られた立体曼荼羅」全5体が揃って展示。
・業用虚空蔵(迦楼羅座)
・蓮華虚空蔵(孔雀座)
・法界虚空蔵(馬座)
・宝光虚空蔵(象座)
・金剛虚空蔵(獅子座)
5体全てが現存することに加え、台座の馬・象・獅子の3つは制作当初のものであるという。逆に鳥類の迦楼羅(かるら)と孔雀は後補ということか。法界虚空蔵を中央に、他の4体を四方に置く展示。動物たちは可愛いし、菩薩の表情も魅力的。
2 お気に入り・その2
「東寺講堂から、史上最多となる15体の仏像が集結。史上最大規模の仏像曼荼羅が出現。」
【五仏(如来):5体中4体】
空海時代の如来5体は室町時代に火災で失われる。それから350年経った1834年に造られたもの。
重文《宝生如来坐像》
重文《阿弥陀如来坐像》
重文《不空成就如来坐像》
重文《阿閦如来坐像》
【菩薩:5体中4体】
以下の国宝・菩薩、明王、天は全て平安時代・839年の作。
空海に選ばれた菩薩の一つ
国宝《金剛宝菩薩坐像》
奈良時代の伝統技法でつくられる
国宝《金剛法菩薩坐像》
精悍な顔、筋肉質な体
国宝《金剛業菩薩坐像》
大日から教えを受けた菩薩
国宝《金剛薩埵菩薩坐像》
【明王:5体中4体】
足元には異教の神
国宝《降三世明王立像》
横たわる二人の異教の神。一人は苦しそう、一人は我慢の無表情か。
蛇が巻きつく魔性の姿
国宝《軍荼利明王立像》
八本の腕にそれぞれ蛇が巻きつく。
死の神に座る明王
国宝《大威徳明王騎牛像》
牛に注目する。
5つめの不可思議な顔
国宝《金剛夜叉明王立像》
ダブルフェイスの不可思議。
【天:6体中3体】
日本一怖い四天王
国宝《持国天立像》
邪鬼を踏みつける。
横を見て睨む四天王
国宝《増長天立像》
踏みつけられた邪鬼の姿勢、表情。
東寺の貴公子
国宝《帝釈天騎象像》
そのイケメンぶりが評判。本展で唯一撮影可能な展示品。
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3 もう1点のお気に入り
国宝
《兜跋毘沙門天立像》
中国、唐時代・8世紀
地天女の両手に支えられて立つ毘沙門天を兜跋毘沙門天という。地天女の両脇にしたがう、尼藍婆(にらんば)と毘藍婆(びらんば)の二鬼。鳥を表した冠、鎖を編んだ裾の長い甲を着け、瞳を左下に向けて歯を見せる特異な姿。日本各地でも模刻が造られるなど信仰を集めたという。
4 私の勘違いを長々と
国宝
《両界曼荼羅図(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉》2幅
平安時代・9世紀、東寺
2011年東博の「国宝・重要文化財98.9%」が謳い文句であった「空海と密教美術」展。1日あたり入場者数9,108人を記録した大混雑の展覧会。そこで見た《両界曼荼羅図》、胎蔵界と金剛界の2点のうち私の訪問時は胎蔵界の展示。現存最古の両界曼荼羅図で、空海請来本の様式をほぼそのまま伝えるもの。非常に大きく、収まる展示ケースがよくあったなあ感心するほどの高さ。ただ傷みが激しく、何が描かれているかわからない。でも、寺社にいるかのような壮厳な空気をあたりに発散させていた作品。
本作の展示期間に合わせ訪問したのだが、対面すると明らかに記憶と違う。そう、2011年に見たのは神護寺所蔵の《両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)》であった。