松方コレクション展
2019年6月11日〜9月23日
国立西洋美術館
国立西洋美術館の松方コレクションと言えば、モネの作品を思い浮かべる人も多いだろう。
松方幸次郎は、モネから作品を直接取得している。
1921年の2回目の欧州蒐集旅行の際、6月にジヴェルニーのモネ邸を訪問。9月に1808年もののナポレオンのブランデーを手土産に再訪。作品十数点を譲り受けたのである。
訪問に先だち、パリ滞在中の姪夫婦(長兄の長女、黒木竹子。アマン=ジャンが描いた彼女の着物姿の肖像画も本展に展示)や松方の蒐集アドバイザーであるロダン美術館のベネディットを通じて、事前準備・調整を行ったうえでの訪問・購入申出である。
こうして譲り受けた作品のなかには、本展のトップに展示される《睡蓮》やラストに展示される《睡蓮、柳の反映》という「睡蓮の大装飾画」関連作品2点が含まれる。
後者の作品は破損して画面半分を失った残念な状態であるが、前者の作品は実に見応えのある「睡蓮」で、「松方コレクションを代表する作品」とされるのも納得である。
そこで、松方コレクションにおけるモネ作品を確認する。
『松方コレクション 西洋美術全作品 第1巻 絵画』を参照する。もちろん図書館にて。
1 松方コレクションにおけるモネ作品数は?
33点とされる。
ただし、現・個人蔵の1点は松方コレクションであった確証がない、いわば「伝」松方コレクション作品。
以下では、その1点を除く32点を確認する。
2 松方はどこからモネ作品を入手したか?
1)モネから直接譲り受け
15点(うち10点は推定)
2)ハンセン・コレクションから獲得
7点
3)その他画廊から入手
10点
ほぼ半数がモネからの直接譲り受けである。
3 モネ作品は如何にして松方コレクションから離れたか?
1)1959年のフランス政府からの寄贈返還により国立西洋美術館所蔵になる。
11点
(うち7点がモネから譲り受け)
2)2016年にルーヴル美で再発見され、松方家から国立西洋美術館に寄贈する。
1点
(モネから譲り受け)
3)日本に持ち込み、松方家が所蔵、現所蔵者(ブリヂストン美術館)に寄贈する。
1点
(ハンセン・コレから獲得)
4)1944年にフランス政府に接収され、1947年に競売にかけられる。
4点
(うち3点がモネから譲り受け)
5)パリのコレクションの管理人である日置釭三郎が経費捻出のため売却する。
6点
(うち4点がモネから譲り受け)
6)日本に持ち込んだ後、散逸する。
7点
(うち6点がハンセン・コレから獲得)
7)経緯不明
2点
モネから譲り受けた15点中、約半分の8点が国立西洋美術館所蔵。
他の7点は米・スイス・イスラエルの美術館蔵各1点、個人蔵3点、不明1点となっている(本展にはスイスの美術館蔵の作品が出品)。
15点すべてが日本に持ち込まれず、パリに留め置かれている。
(一方、ハンセン・コレクションからの7点はすべて日本に持ち込み。)
4 国立西洋美術館所蔵のモネ作品
18点。油彩画に限ると16点。
油彩画16点を見ると
12点:松方コレクション
8点はモネから直接譲り受け。
4点はその他画廊で購入。
(ハンセン・コレクションからは無し)
4点:その他
2点は館が購入等により取得。
2点は寄託作品。
松方がモネから直接譲り受けた作品15点中、ほぼ半分の8点が国立西洋美術館の常設展示で観ることができる(厳密には、破損の《睡蓮、柳の反映》の展示は期待できないだろうけど)。奇跡的なこと。