2018年のフェルメール展にあわせて刊行、同展企画者である、秦新二・成田睦子著『フェルメール最後の真実』文春文庫より。
2000年
天王寺公園のフェルメール
天王寺公園にある会場周辺は、ちょっとした「カオス」だった。フェルメール展のために行列する人々の周りでは、ホームレスの人たちが酒盛りをしており、焼き鳥の煙がもうもうと上り、カラオケの歌声も響き渡っていた。そう、当時の天王寺公園はホームレスの溜まり場で、毎日が宴会状態だったのだ。
この光景を、オープニング・レセプションに招いたウィーロック氏の目から遠ざけるにはどうすればいいか。苦肉の策として、市立美術館の裏口から会場にご案内したのである。
(中略)展覧会後、多くの人々が通った美術館横の道は「フェルメールの小径」と名付けられた。
今般、2000年および2013年以来となる大阪市立美術館を訪問する。
2013年
2013年当時のフェルメールの小径
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2018年
天王寺駅から大阪市立美術館に向かう道を行くが、「フェルメールの小径」の案内表示が見当たらない。
たぶん同じ道だと思うのだが。
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この辺りは変わった。
2000年当時の「カオス」な状況は、2013年当時はどうだったのか記憶にないが、2018年の今は消え去っている。
天王寺公園エントランスエリアは綺麗に整備され、親子連れや若い人たちなどが集まる憩い/イベントの場、愛称「てんしば」、となっている。
「てんしば」が整備されるなかで、「フェルメールの小径」はやめてしまったのか?
案内表示がない(または私が見つけられなかった)だけで「フェルメールの小径」は継続しているのか?
それとも、2019年のフェルメール展に向けて、新「フェルメールの小径」が登場するのか?
フェルメール大回顧展が2回開催される美術館は、日本では大阪市立美術館だけである。
「ルーヴル美術館展-肖像芸術」開催中の大阪市立美術館。
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ボッティチェリ工房によるイケメンと、ル・ブランによる美女が迎えてくれる。
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一応入場し、アルチンボルドの《春》と《秋》に挨拶だけしておく。
2階のコレクション展がなかなかの充実度合い。3企画のうち1企画はパスし、2企画を見る。
「おおさかの仏教美術1」は、大阪府に所在する社寺から預かっている宝物15点を展示。河内長野市の観心寺の白鳳時代の仏像・重文《金銅 菩薩半跏像》や、大阪市平野区の長宝寺の14世紀の仏画・重文《仏涅槃図》などを見る。
「人物を描く-美人画と自画像」は、館所蔵・寄託作品から、近代日本画家による美人画や、洋画家による自画像・肖像画、計14点を展示。北野恒富の美人画や椿貞雄の劉生風肖像画、村山槐多の自画像など。特に島成園の黒い痣のある自画像《無題》が印象的。
以上を、時間の関係で40分ほどで急ぎ回る。
2019年(希望)
大阪会場のフェルメール展訪問。
お目当ては、大阪限り出品の《恋文》と、東京では1カ月弱の出品だが大阪では通期展示となる《取り持ち女》というところか。
2019年2月のフェルメール展(大阪)訪問時も、意識して探してみたのですが、見当たりませんでした。
やっぱり「フェルメールの小径」(の案内表示)はなくなったのですね。
ファミリーや若者向けの「てんしば」がオープンして、「小径」感のある環境ではなくなりましたね。確かに拡声器の音がうるさい。
フェルメール・ファンとしては、「フェルメールの小径」がここにあったことはずっと覚えていたいと思います。
フェルメールの小径てんしばができたときに案内表示ががなくなりました。それも公園の歴史を軽んじるような行為で非常に残念な思いがします。