クラーナハ展記念講演会
2016年10月15日(土)14:00~15:30
グイド・メスリング氏(ウィーン美術史美術館学芸員)
「旅する芸術家 - クラーナハとネーデルラント」
ウィーン美術史美術館学芸員で本展監修者であるグイド・メスリング氏による講演会。
講演内容は、ザクセン地方の宮廷画家である画家がネーデルランド美術に与えた影響。個別作品事例をもとに説明がなされる。
ちょっと専門的過ぎて、私は早々に話についていくのを諦める(なぜイタリアに行かなかったのか不思議、を繰り返し話していたような気が)。
諦めていたところ、予定より早く15時前に講演は終了し、質疑応答に移る。
と、多数の質問が出て、予定終了時刻まで続く。
私的には、より一般的な画家の話となった質疑のほうが興味深かった。
以下、質疑から、印象とメモに残る断片的内容を、誤解は当然あるものとして記載。
1 画家の特徴
画家は、多彩、器用、革新的。
2 質感
細かい描写(*)で技を誇示するが、「質感」はない。「質感」は画家の拘るところではない。
*《ユディト》の眼に窓枠が描かれていることを知る。
3 画家の革新性
1)画題の選択
今まで扱われなかった画題を取り上げる。例えば、北方初となる等身大のヴィーナス裸体像。
2)再現のしやすさ
工房制作の効率性の観点から、様式の標準化を確立する。標準化されたポーズなど。
このため、オリジナル作か工房作か帰属の判断は困難。工房作もクラーナハ作と考えるべき。クラーナハ(子)とある作品は、子の特徴がよく表れていることから、クラーナハ(子)と表示。
4 画家の女性像
画家の女性像は、肉感的でない、平べったいイメージ。画家の女性観うんぬんというより、時代の好み・理想であり、北方の伝統でもある。例えば、メムリングが描く女性も細身。
5 プロテスタント
ヴィッテンベルクは、今も当時も人口数千人ほどの小さい街。その小さい街で、ルターが宣言した時期と画家が成功した時期が重なり、厚い友情で結ばれた。考え方により親近感を抱くようになっていったというところだろう。
最後に、《ユディト》の修復家が紹介される。会場内は、どよめきと盛大な拍手。