東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「目力展」(板橋区立美術館)

2021年09月14日 | 展覧会(日本美術)
館蔵品展   目力展   
見る/見られるの関係性
2021年8月28日〜10月3日
板橋区立美術館
 
   板橋区立美術館の館蔵品展。入場無料。
 
   実見を望んでいた新海覚雄《貯蓄報国》が本展に出品されると知り、早速訪問する。
 
   1943(昭和18)年の銃後の国民の暮らし。
   1943年の第2回大東亜戦争美術展に出品し、美術報国賞を受賞。
 
新海覚雄
《貯蓄報国》
1943年、112.4×163.0cm
板橋区立美術館
 
   思っていたよりサイズが大きい。
   おさげ髪のセーラー服姿の女性が、長くて薄い。右手を伸ばしているのは計測しようとしているためであるらしいが、郵便局で計測するものと言えば郵便物。窓口は画面内には二つ描かれるが、一つは事務室内に重そうな机を置くことで閉鎖している。描かれているのは貯金窓口で、画面外に郵便窓口もあって、セーラー服姿の女性は郵便の係ということだろうか。後姿の男性の後頭部、白さと薄さが暗示されているような気がする。事務室の机の上には現金やら証書やら帳簿?書類やらスタンプやら朱肉やらあるが、計算機(当時ならそろばんか)は見当たらない。7組8人が窓口に並び、さらに傘を持った女性が入ってくる。まだまだ待つ必要がありそうだ。外は晴れ、道が日に照らされている。
 
   戦時中を伺わせるのは、国民服を着た男性と、壁のポスター。
 
   「270億」の文字に「飛行機」が描かれた」ポスターと、「國債」の文字があるポスター。前者は、戦費を賄うため昭和13年に開始された「貯蓄奨励運動」のポスター。初年度の目標80億円であったが、この年昭和18年の目標は270億円。昭和20年の目標は600億円になる。後者は、戦時国債(おそらく大東亜戦争国債)の売出告知ポスターだろう。
 
   絵に騒がしさを感じないのは、人々が皆、疲れ、諦めの状態にあることを示しているのだろうか。
 
 
   想像以上に見応えがある作品であった。
 
 
   本展は、館収蔵品から、日本の作家による1930〜50年代制作の「目」「見る」「見られる」-「目力」を感じられる作品100点近くが展示される。
   
   興味深そうな作品はいくつもあったのだが、今回の鑑賞は、《貯蓄報国》にほぼ注力することとなる。


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