ウィーン美術史美術館所蔵
風景画の誕生
2015年9月9日~12月7日
Bunkamuraザ・ミュージアム
1)パティニールの青色
アントワープで活躍したヨアヒム・パティニール(Joachim Patinir)(1480頃-1524)。
その作品数は少なく、工房作を含めても20点程とされる。
そんな貴重なパティニール作品が初来日。
《聖カタリナの車輪の奇跡》1515年以前 油彩・板
「遥かなる青」
「初めて風景画家と呼ばれた男」
なんといっても、その青色。強烈な青色。かつ、感じがよい、好ましい青色。
その青色の素晴らしさは、図版ではわからない。
実見できたことに改めて感謝。
2)バッサーノの大型月暦画に囲まれる
10月14日付朝日新聞夕刊、高階秀爾氏の「(美の季想)月暦画を味わう 天体に呼応した生活情景」で取り上げられたレアンドロ・バッサーノの月歴画連作9カ月10点。
日本にいながらにして、北イタリアの農村を舞台とする大型連作に三方を囲まれる貴重な機会。
9月・10月・12月がないが、ウィーン美術史美術館が所蔵していないのだから仕方がない(12月は所在不明、9月・10月はプラハにあるという)。
また7月は2つに分断されている。
1月:狩りからの帰還。雪。雪化粧した山脈。
2月:謝肉祭の光景。家禽の肉。
3月:四旬祭の町の市場の光景。魚、甲殻類。季節の野菜は、新玉ねぎ、かぶ、ねぎ、ほうれん草。
4月:子羊の、羊の刈毛。牛の乳搾り。突然の大雨。
5月:バター・チーズ作り。薔薇の花の切り取り。牛の放牧。
6月:さくらんぼと穀類の収穫。
7月:絹の生産。脱穀。
8月:ぶどうの収穫準備。ワイン樽作り。
11月:11/11、労働契約が終わり、家財道具を車に積み上げて村に帰る農夫たち。たくさんの収穫物が集められた台所の光景。織物用の繊維を取り出すために亜麻を叩く。
無論、ルーカス・ファン・ファルケンボルフ《夏の風景(7月または8月)》もブリューゲル風味も感じられる良い作品だが1点展示。ここは連作の力に軍配。
以上、再訪し、改めて堪能した2点(再掲のようなもの)。