金沢工業大学所蔵
世界を変えた書物展
2018年9月8日 〜9月24日
上野の森美術館
金沢工業大学は、毎年、稀覯書カレンダーを作成しているようだ。
展示会場の前室に、2001/2002年版以降のカレンダーが掲示されている。
気になったのは、2011/2012年版。
ロベルトゥス・ヴァルトリウス(c.1413-1484)
「軍事論」
ヴェローナ、1472年、初版
この怪獣は「アラビアの都市を攻める攻城機械」であり、「兵、下げ橋、攻城梯子を備え、内部は多様な兵器で満ちている」らしい。想像の世界にのみ存在する機械だなあ。レオナルド・ダ・ヴィンチだけではない。
【金沢工業大学サイトより(表現を適宜変更)】
ヴァルトリウスは、リミニの領主マラテスタの技術顧問を務めている。
主要な仕事のひとつは、マラテスタのために色々な兵器を考案すること。
彼は当時知られていた軍事技術に自分のアイデアを加えて、1460年にこの本を書き上げる。最初は写本によって広く読まれたが、1472年に印刷本となって82枚のイラストをつけて出版され、当時のベストセラーになる。
城攻めの機械や戦車や野戦用の橋等、当時の技術水準がわかる。潜水服や潜水艦のアイデア等、近代になって実用化された技術の着想も見られる。レオナルド・ダ・ヴィンチもチェザーレ・ボルジアの技術顧問をしていた時、この本を一冊持っていて、ヴァルトリウスのアイデアを幾つか取り入れたとされる。
残念ながら、この書物は本展に出品されていない。
1階最初の展示室「知の壁」。
注目したい書物は、
フランチェスコ・コロンナ (1432/ 33 - 1527)
「ポリュフィルス狂恋夢」
ヴェネツィア、1499年、初版
建築関連書の枠での展示だからなのか、開かれた頁の挿絵は「ピラミッド状の寺院」。
「イタリア・ルネサンスを代表する挿絵入りの本」「初期ルネサンス様式で描かれた緻密な木版画の挿絵を伴う、格調高いページ・レイアウトのデザイン」「タイポグラフィの質と明瞭さ」(Wikipediaより)。ストーリー自体は、現代人が読むには辛そうである。
著者はドミニコ会修道士とされる。出版者は、商業印刷の父とされるアルド・マヌーツィオ(1450頃- 1515)。
他の挿絵も見たいな。
「知の壁」の稀覯書たちから
ウィトルウィルス(不明25B.C.)
「ラテン語より俗語に翻訳された十巻の建築書」
コモ、1521年、初版
デューラー(1471-1528)
「人体比例論四書」
ニュールンベルグ、1528年、初版
どれだったっけ?
「知の壁」出口から振り返る。
「知の森」2「ニュートン宇宙」より2選。
ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
「星界の報告」
ヴェネツィア、1610年、初版
コペルニクスの天文学的仮説を可視的に初めて実証。
ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
「プトレマイオス及びコペルニクスの世界二大体系についての対話」
フィレンツェ、1632年、初版
一般向けの啓蒙書。
異端審問所に召喚、逮捕、拘禁。宗教裁判。自説の放棄。「それでも地球は動いている」。1822年まで法王庁の禁書目録に。