東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ベルニーニ『シピオーネ・ボルゲーゼの肖像』

2010年03月13日 | 展覧会(西洋美術)
東京都美術館で開催中の「ボルゲーゼ美術館展」も残り3週間となりました。

出品作48点中、カラヴァッジョの次に見るべき作品として、ベルニーニ『シピオーネ・ボルゲーゼの肖像』をあげます。入場して最初の部屋に飾られています。

石鍋真澄氏の著作『ベルニーニ』から、本作品にかかる記述を抜粋させてもらいます。

「優れた肖像にはモデルの人間性だけでなく、モデルと作者の人間関係までもが表現されるものである。ベルニーニの場合にも、最も優れた肖像にはモデルに対する人間的感情が強く反映している。」
「そうした意味で特筆すべき肖像が・・・(ベルニーニの才能を育てたボルゲーゼ家の当主である)シピオーネ・ボルゲーゼの肖像である。」

「彼の多くの肖像の中でも異彩を放っている。」
「この肖像は生き生きとしており、ベルニーニの親愛の情があふれている。」
「目も鼻も口も、それぞれが個性的で、それぞれが生きている。」

「最後に面白いエピソードを書き添えて、シピオーネ・ボルゲーゼの肖像に関する話を終えることとしよう。肖像の製作が最終段階に入った時、額のところにひびがあるのを発見した。そこでベルニーニはこの肖像が完成すると、すぐさま品質に間違いのない大理石を用意して、まったく同じ肖像を製作した。彼はこの第二の肖像を(19日間または昼夜三日間)で仕上げ、仕上がるとシピオーネ・ボルゲーゼをアトリエに招いた。枢機卿はその出来栄えに満足したが、やはり額のひびが気になる。しかし紳士たる枢機卿はそれを面に出さずにいると、ベルニーニは何くわぬ顔で会話を交わしてから、第二の完璧な肖像を披露し、シピオーネ・ボルゲーゼを大いに喜ばせた。」
「この二つの肖像は、今日もボルゲーゼ美術館に対にして飾られている。第二の肖像はやや生気に欠けるところがあり、第一作には及ばない。」

本著作を読むと、ベルニーニは17世紀ローマ芸術のまさしく「帝王」であったと強く認識させられます。

しかし、今上野にいるのは、どちらの肖像なのだろう。


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