東京でカラヴァッジョ 日記

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カラヴァッジョ天井画のある邸宅の行方

2022年02月01日 | カラヴァッジョ
カラバッジョ天井画のある邸宅の行方
伊貴族の米国人妻と家族の相続争い
【1月25日 AFP】
 
 
 イタリアの貴族ニコロ・ボンコンパーニ・ルドヴィージ公の3番目の妻で、最後の妻でもあったリタ・ジェンレット・ボンコンパーニ・ルドヴィージ夫人(72)。米テキサス州出身。
 2009年に再婚した8歳年上の夫が2018年に死去。
 夫婦で住んでいたローマ中心部にある邸宅ボンコンパーニ・ルドヴィージ邸は、ルドヴィージ公の最初の妻の子どもたちとの相続争いとなり、裁判所の命令により競売にかけられることとなる。
 
 よくある超資産家の相続争いのようだが、そのゴシップが日本でも簡単ながらも伝えられているのは、その邸宅には、西洋美術史上の巨匠が制作した極めて重要な壁画があるから。
 
 
1階の小部屋(廊下?)
カラヴァッジョ
画家の初期作品で画家唯一の壁画。
《ユピテル、ネプトゥルヌス、プルート》
1596年頃、300×180cm
 
 
1階の広間の天井画
グエルチーノ
画家の代表作、邸宅の呼称「アウロラ邸」は本作が由来。
《アウロラ》**
《昼の寓意》ルネッタ
《夜の寓意》ルネッタ***
1621年
 
 
2階の広間の天井画
グエルチーノ
《名声》
1621年
 
 
 
 2022年1月18日に競売。
 
 価格は、4億7100万ユーロ(約607億円)。
 そのうち3億5000万ユーロ(約451億円)がカラヴァッジョやグエルチーノの天井画などによる上乗せ相当額であるらしい。
 
 しかし、入札者が現れず。
 
 4月7日に再度競売が行われる予定。
 開始価格は、2割引き下げて、3億7680万ユーロ(約485億円)からとのこと。 
 
 イタリア政府に期待する声もあるようだが。
 
**
*** 
 
 
 
 同邸宅には、天正遣欧少年使節が教皇に謁見する場面を描いた天井画もあるらしい。
 ただし、制作時期は、16世紀当時ではなく、それから250年以上経過した1855年頃。背景には日本の開国があろうが、当時のイタリアで日本と聞いて思い浮かぶのは、少年使節のエピソードくらいだったのだろう。
 


4 コメント

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Unknown (クリン)
2022-02-02 06:58:49
これは耳寄りなジョウホウ!ありがとうございます✨✨✨✨
うちのチット(歴女)、「天正遣欧使節」が好きで、だいぶ前ですが彼らがおとずれた場所に足をはこぶため、ヨーロッパ旅行に行ったこともあるんです⤴✨すぐ教えますね!
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Unknown ()
2022-02-02 18:11:53
クリン様
コメントありがとうございます。
天正遣欧少年使節と言えば、若桑みどり氏の力作『クワトロ・ラガッツィ』が忘れられません。
また、展覧会では、2017年に神戸・青森・八王子を巡回した「遥かなるルネサンス-天正遣欧少年使節がたどったイタリア」展。イタリアの行程に沿った展示で非常に面白く、その図録は今もよく参照しています。
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カジノ・ルドヴィージの天井画 (むろさん)
2022-02-04 23:24:15
昨年10月頃から話題になっていたカジノ・ルドヴィージ売却、オークションの件に関連して、手持ちのカラヴァッジョの本を見ていた時に気がついたことなのですが、この天井画は1989~90年の修復以前は、プルートの下半身は布に覆われていて、現在のように局部がむき出しになっていませんでした。美術出版社世界の巨匠シリーズCARAVAGGIO(アルフレッド・モワール著、若桑みどり訳 1984年発行)に修復前の写真が掲載されていて、現状と比較すると、プルートの下半身の布以外に、全体が鮮やかな色に復元されたことが分かります。(この布の除去については、すぐにミケランジェロの最後の審判やマザッチオのカルミネのフレスコ画 楽園追放を連想しました。)モワールの本は10年ぐらい前に手に入れ、何度も見ているはずなのに、この現状との違いについては、今回のオークションの件で初めて気がつきました。カラヴァッジョは研究の進展が速いので、古い本はあまり役に立たないと言われていますが、時々古い本を眺めるのも面白いと思った次第です。

なお、John T. Spike のCaravaggio(2010年)にはネプチューンの顔とカラヴァッジョの自画像(サン・ルイジ・フランチエージ教会コンタレッリ礼拝堂マタイの殉教)との類似が書かれていますが、モワールの本では「3人の神々はウフィツィにあるバッカスと家族のようによく似ている。ネプトゥヌスはまるでバッカスのひげの生えた兄のように見える」とあります。そこまで似ているとも思えませんが、同じ頃の絵なので、似たような表情であることは確かです。

また、カジノ・ルドヴィージの見学については、2010年のカラヴァッジョ没後400年記念カラヴァッジョ展(2010年2月~6月 スクデリエ・デル・クィリナーレ)に合わせ、約3カ月間、週2回ほど30人限定、電話予約で公開したそうで、日本からこのカラヴァッジョ展を見に行った人で、この公開を知っていた人の多くがこの時見学したようです。それ以降は大勢集まらないと見ることができなくなってしまいましたが、この時は不特定多数の人の集まりで入場できたので、貴重な機会だったようです。今回のオークションをきっかけに、見学が容易になるような方向に変わってくれることを願っています。(それ以前にコロナ禍が終息して、海外旅行ができるようになることが第一ですが。)

ついでながら、フィレンツェ、サンタ・マリア・デル・カルミネのブランカッチ礼拝堂フレスコ画修復の情報も書いておきます。私は1990年代前半に修復が終わるのを待って見に行きましたが、その後30年ぐらい経過してまた劣化が進んできたようで、現在足場が組まれていて週3日間の午後、予約すれば足場の上から見学できるそうです。
https://www.ansa.jp/canale_viaggiart/it/regione/toscana/2022/01/24/si-restaura-la-cappella-brancacci-a-firenze-resta-visitabile_c5406316-d055-4baa-a0da-9c68b71f6f36.html

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Unknown ()
2022-02-06 08:09:32
むろさん様
コメントありがとうございます。
カラヴァッジョ天井画の修復前の写真は見たことがないですね。手元の範囲では見当たりませんでしたので、ご紹介いただいた画集を図書館で見ようと思います。
ブランカッチ礼拝堂フレスコ画修復の情報をありがとうございます。フィレンツェ、もう一度行きたいですね。
引き続きよろしくお願いいたします。
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