2022年2月2日、大阪中之島美術館が開館する。
1983年に美術館構想が発表されてから約40年、1990年に美術館建設準備室が設置されてから約30年、ついに念願の開館を迎えることとなる。
そこで、大阪中之島美術館の西洋美術コレクションより1点。
アルチンボルド(1526〜93)
《ソムリエ(ウェイター)》
1574年、87.5×66.6cm
大阪中之島美術館
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私が初めて本作品を観たのは、2014年のBunkamuraザ・ミュージアム「だまし絵展2」にて。大阪市がアルチンボルドを所蔵していることに驚く。その後、2017年の国立西洋美術館「アルチンボルド展」で再会。
ワイン貯蔵庫の管理人をテーマとしたと思われる本作では、大樽と小樽が胴体と腕に、陶製の瓶が顔になっています。目はガラス瓶の口、ヒゲと口は携帯用のグラス入れです。ほかにもテイスティング用の銀杯、ワインを注ぐ漏斗、貯蔵庫の鍵など、ワイン貯蔵に関する色々なものを巧みに組み合わせ、人物像に見立てています。
首元の銘文には、「若いワイン」とか、「オーストリア産」、「ライン産」とかの文字が並んでいるらしい。
大皿の裏にあるスペイン王フェリペ2世(在位:1556〜98)の紋章は、本作品(または別バージョン)が皇帝マクシミリアン2世(在位:1564〜76)からフェリペ2世への贈り物として制作されたものであることを示すようだ。
大阪市は、1994年に本作品を購入した。
モディリアーニと同様に大阪新美術館のために購入したのかと思っていたら、そうではなかったので、驚く。(言われてみれば、大阪新美術館の作品収集方針に合致しない。)
1995年に開館する「ふれあい港館ワインミュージアム」のために購入したのである。
「ふれあい港館ワインミュージアム」とは、なんともバブル期らしい企画。
地下1階が、大阪港と姉妹港・友好港提携している7つの外国の港を紹介するフロア。
地下2階が、何故大阪市でやる必要があるのか不明だが、ワイン博物館。貴重なワインを購入して展示(または貯蔵)するなど、ワイン関連品の展示が行われ、その一つとしてアルチンボルドが常設展示されていたようである。
だから、「ウェイター」ではなく、わざわざ「ソムリエ」と呼ぶのか。
しかし、仮に私がこの施設でアルチンボルドを見ていたとしても、16世紀制作の美術作品(本物)とは思わなかっただろう。
おいくらだったのだろう。
ちなみに、本作に付けられた額は、稀少な16世紀末のイタリア製のものであるらしい。本作購入時に額が附属していなかったので、相応しいものをわざわざ探したという。次に見るときには額にも注目。
「ふれあい港館ワインミュージアム」は、入場者低迷等により、2008年に閉鎖する。
アルチンボルドは、近隣の「なにわの海の時空館」に移管され、2010年に「なにわの海の時空館」から「大阪新美術館建設準備室」に寄託される。2013年の「なにわの海の時空館」閉鎖を受けてなのだろう、2014年に「大阪新美術館建設準備室」へ移管される。
*よって、展覧会への出品時の所蔵者名は、2007年の横須賀美術館「澁澤龍彦 幻想美術館」展では「大阪市港湾局 大阪南港ふれあい港館」、2014年の「だまし絵展2」および2017年の「アルチンボルド展」では「大阪新美術館建設準備室」となっている。
日本で唯一であるらしいアルチンボルド作品。
「giuseppe arcimboldo the waiter」でネット検索すると、大阪の本作品ではなく、個人蔵の全く同じに見える別バージョン作品が出てくるのは、少し残念である。