ルーヴル美術館展 愛を描く
2023年3月1日〜6月12日
国立新美術館
2023年のルーヴル美術館展は、「愛を描く」。
16世紀から19世紀前半までの「愛を描く」西洋絵画73点が展示される。
ギリシャ・ローマ神話、キリスト教、日常生活・風俗、ロマン主義における愛。
本展の構成は、次のとおり。
細い17区分。
プロローグ 愛の発明
1章 愛の神のもとに - 古代神話における欲望を描く
(1)欲情 - 愛の眼差し
(2)暴力と魔力
(3)死が二人を分かつまで - 恋人たちの結末
(4)愛の勝利
2章 キリスト教の神のもとに
(1)「ローマの慈愛」からキリスト教の慈愛へ
(2)孝心・親子愛 - 聖家族にみる模範
(3)犠牲に至る愛 - キリストの犠牲と聖人の殉教
(4)法悦に至る神への愛 - マグダラのマリアの官能的・精神的な愛
3章 人間のもとに - 誘惑の時代
(1)室内と酒場 - オランダ絵画における愛の悦びと駆け引き
(2)優雅な牧歌的恋愛 - フランス流の誘惑のゲーム
(3)エロティシズム - 《かんぬき》をめぐって
(4)夫婦の幸福の演出
(5)結婚の絆か、愛の絆か?
4章 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇
(1)アモルとプシュケ
(2)ロマン主義における男性の情熱
(3)死に至る愛
事前情報から予想していたところであるが、私的には盛り上がらない作品構成であった。
そのなかで、気になる作品2選。
サミュエル・ファン・ホーホストラーテン(1627-78)
《部屋履き》
1655-1662年頃、103 x 70 cm
17世紀オランダの画家。大著『絵画芸術の高等画派入門』の出版など美術理論家としても知られる。
人物が描かれていない、陽が差し込む室内。
戸口の向こうに連なる3つの部屋。床の模様は、赤と黒の菱形、赤い長方形、黒と白の菱形とそれぞれ異なる。一番手前の部屋の壁の下部にはデルフトタイルの装飾。
乱暴に脱ぎ捨てられた部屋履き。女性用の木靴らしい。
扉の錠前に差し込まれたままの鍵。
部屋の陰になったところに立てかけられている箒。
一番奥の部屋の、消えたロウソク。
また、壁に飾られた絵。17世紀オランダの画家ヘラルト・テル・ボルフの《父の訓戒》の別画家による改作であるらしい。《父の訓戒》は、誤解釈からその題名で呼ばれたが、実は娼家の場面を描いていた、という話で知られる作品。
以上のようなことなどから、この絵は、「家の女主人は自分がすべきことを途中で投げ出し、どこかで不謹慎な愛の誘惑に身をゆだねている」と暗示しているというのだから、オランダ絵画は難しい。
ギヨーム・ボディニエ(1795-1872)
《イタリアの婚姻契約》
1831年、100×138cm
19世紀フランスの画家。パリの高等美術学校でドラクロワやジェリコーとともに学ぶ。1822年から5年間の第1次ローマ滞在ではコローと友人となり共に旅をしたりする。1829〜41年の第2次ローマ滞在にてローマで活動する。以降は地元アンジェで活動。
画家は、イタリアの人々の風俗を描いた作品で知られるようだ。
本作は、第2次ローマ滞在期の作品で、ローマ近郊アルバーノの裕福な農民一家で、婚姻契約が執り行われている場面が描かれる。
背景の丘陵。
契約書の起草に没頭する公証人。
向かいあって座る若い男女。真っ直ぐに許嫁を見つめる男と、目を伏せている女。
娘の手を優しく握る母親。
宴席の準備をする召使いの女性に目が行く父親。
イタリアの人々の風俗といっても実態とはかけ離れているのだろうが、この手の画題は、私的には好みである。
第4章(全10点)は、撮影可能。
撮影可能作品から3選。
フランソワ・ジェラール(1770-1837)
《アモルとプシュケ》または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》
1798年、186 x 132 cm
アリ・シェフェール(1795-1858)
《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》
1855年、171 x 239 cm
会期最初の土曜日午後の訪問。
当日になってから事前日時指定の販売状況を確認すると遅い時間帯を残して完売であったものの、現地で無事に当日券を購入することができた。展示室内も結構な人。
ルーヴル美術館の名前はやはり強い。
最後はドラクロワ。