2022年7月の国立西洋美術館の常設展。
通常時は常設展の華である印象派作品の多くが、開催中の企画展「自然と人のダイアローグ」展に出品されている。
そのため、チケット売場では、常設展チケットを求める人に対して、20点ほどの作品図版を掲載したプレートを提示し、これらの作品はご覧になれませんがよろしいですかの旨確認を取っている。
いつもはモネ作品が多数展示されている新館2階の常設展示室は、今どうなっているのだろう。
いつもは国立西洋美術館の箱入り娘であるモネ《睡蓮》が展示されている場所には、ルノワールが展示されている。
ルノワール
《アルジェリア風のパリの女たち》
1872年、156×128.8cm、松方コレクション
画家31歳の初期作品。
ドラクロワ《アルジェの女たち》などを下敷きに、パリの女性たちをモデルとして、当時流行りの東方趣味を表現している。
1959年のフランスからの松方コレクションの寄贈返還の際、ゴッホ《アルルの寝室》など19点とともにフランスに留め置く候補の一つとして挙げられていたが、日本側がルノワールおよびゴッホの返還に拘った結果、ルノワールはなんとか留め置き対象から外されたという。
ルノワール
《帽子の女》
1891年、56×46.5cm、松方コレクション
ルノワールの画業において「真珠色の時代」と呼ばれる1890年代に制作。
モネ作品については、国立西洋美術館は、油彩画15点、パステル1点、素描2点を所蔵する(寄託を含む)。
うち油彩画10点、パステル1点は企画展に出品され、常設展には油彩画4点が展示される。
モネ
《並木道(サン=シメオン農場の道)》
1864年、81.6×46.4cm、松方コレクション
現存する数少ない初期作品の一つであるという。
モネ
《しゃくやくの花園》
1887年、65.3×100cm、松方コレクション
モネの自宅に造営する庭を題材として描かれた作品のなかで初期の作品。
モネ
《ヴェトゥイユ》
1902年、90×93cm、松方コレクション
作品に描かれた小さな教会は、パリの北西に位置するセーヌ河に面した小さな町ヴェトゥイユに今も残る12世紀の教会だという。
1878-81年にモネが居住し、最初の妻カミーユを亡くしたこの町を、10数年後に再訪し、その対岸からの眺めを描いた15点ほどの連作の一つ。
(寄託のため撮影不可)
モネ
《柳》
1897-98年頃、71×89.5cm、寄託
ドガの「怖い絵」。
ドガ
《舞台袖の3人の踊り子》
1880-85年頃、54.6×64.8cm、2016年購入
国立新美術館「メトロポリタン美術館展」に出品されていたドガ《踊り子たち、ピンクと緑》にも描かれていた、踊り子を見つめるシルクハットの男の、画面の隅で身体の大部分が隠れされた黒いシルエットが、本作品にも登場している。
〈参考:ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》〉
当時はこれが当たり前の状況であり、ドガもその状況に違和感を持つことなく当然あるものとして、画面構成上の効果だけを考えて、男たちを描き込んだのであろう。
ベルト・モリゾの油彩画と、マネのリトグラフ。
ベルト・モリゾ
《黒いドレスの女性(観劇の前)》
1875年、57.3×30.7cm、2017年購入
↑ 4月のリニューアルオープン初日に行ったときは、作品名キャプションが相違していた。
現在は正しくなっているほか、本来どおり、マネのリトグラフや関連資料も追加展示されている。
マネ
《ベルト・モリゾの肖像》
1872-74年、25.0 x 17.5(画寸)、2021年購入
上記記載の作品以外にも、ルノワール2点、セザンヌ1点、ピサロ2点に、ロダン彫刻2点が展示されており、この展示室の見応えは十分。
〈蛇足〉
本館2階展示のカルロ・ドルチ《悲しみの聖母》について、小企画として本作品の色材調査が紹介されている。
その参考である顔料の見本展示。
4月のリニューアルオープン初日には「調整中」であった「金粉」が、調整完了していた。
また、赤丸と青丸による区分表示も追加されている。
(上:4月、下:7月)