9/8付の朝日新聞夕刊にて知る。
8/24に姫路市立美術館が記者発表を行ったもの。
姫路市立美術館が所蔵するマティスの油彩画《ニース郊外の風景》は、「松方コレクション」の一つだった可能性が高いとのこと。今後、国立西洋美術館がさらに詳しい調査を進めるという。
1959年にフランス政府から寄贈返還された松方コレクション。
1944年に「敵国人財産」としてフランス政府に接収されるまでは、パリのロダン美術館に保管されていた。
パリの松方コレクションの後見役である日置釭三郎は、経費捻出のため、松方の許可を得て、1939-44年頃、松方コレクションの一部を売却した。
売却した絵画は全20点(他にもロダンの彫刻などを売却)。
画家別に見ると、ブーダン1点、マネ1点、モネ6点、ゴーガン1点、ボナール5点、マティス6点。
マティスについて言えば、松方コレクションのマティス作品は6点であり、その全てを売却したこととなる。したがって、国立西洋美術館が所蔵する旧松方コレクションには、マティス作品は1点も含まれていない。
これらマティス作品6点の売却後の所在については、バーゼル美術館が所蔵する1点(2019年の国立西洋美術館「松方コレクション展」に出品)を除き、長く所在不明であった。
2018年、パリにて、ロダン美術館に保管されていた時代、1920年代半ば頃に松方コレクションを撮影したガラス乾板が発見された。
この発見により、フランスから寄贈返還された破損作品について破損前の本来の姿が分かったり、これまで詳細不明とされていた作品についてその画像が分かったりした。
マティスについて言えば、画像が分かったことにより、2点が海外の美術館が所蔵する作品であると特定できたようである。
そして、新たに1点、姫路市立美術館が所蔵する作品が松方コレクションであった可能性が発表されたこととなる。
姫路市立美術館が所蔵するマティス作品《ニース郊外の風景》は、姫路市の個人コレクターが1977年にロンドンのサザビーズの競売で落札し、他の西洋美術品(近代フランス絵画を中心とする50点)とあわせ1994年に同館に寄贈したもの。
2019年、その個人コレクターが、国立西洋美術館刊行の『松方コレクション 西洋美術全作品』に掲載されているマティスの所在不明の作品「木陰の女たち」が《ニース郊外の風景》と同じ画像であることに気づき、姫路市立美術館に連絡した。
個人コレクターは、購入したときの競売前の内覧会で「この作品は松方が所有していた」と耳打ちされたとのことで、その言葉がずっと気になっていたのだろう、今回の調査に繋がったようだ。
いつも楽しく拝読しております。
私は関西に住んでいまして、姫路市立美術館にはよく足を運んでいます。
先月も訪問し、国富コレクション室にて展示されていましたが、マティスは版画「ジャズ」(20種全て所有)シリーズが目立って展示されていることと報道前ということもあり鑑賞者は私以外はいませんでした。
国富コレクションには松方コレクション由来の絵画が5点(カミーユ・コロー、ブラングイン、アンリ・ルバスク、マックス・ぺヒシュタイン、ジョルジュ・デスパーニャ各1点)存在することは知っていましたが、マティスも実は松方コレクションだったことは正直、かなり驚きました。
手元の図録には来歴が掲載されており、それによりますとニューヨークのギャラリーからパリ、チューリヒのビュールレ(ビュールレコレクション)を経てロンドンのマールボロ・ギャラリー(画廊)とアレックス・リード&ルフェーブル(画廊)からアメリカの財務長官を務めたロイド・ベンゼンが所有し、再びアレックス・リード&ルフェーブル(画廊)を経て国富コレクションに入ったとのことです。
パリ時代に松方が入手し、日置が売却したものをビュールレが何らかの形で入手したと推測出来ます。
数奇な運命を経て日本に来たと考えると感慨深い絵であると改めて思いました。
国富コレクションは小品が中心ですが、優品が多く、美術館も世界遺産姫路城の側にございますので、是非一度訪問してください。
コメントありがとうございます。
また、姫路市立美術館(国富コレクション)のマティス作品にかかる詳細な来歴を教えていただき、ありがとうございます。
元ビュールレ・コレクションなのですね。2018年の「ビュールレ・コレクション」展で来日したファンタン=ラトゥール《自画像》が旧松方コレクションとのことでした。さらに他にもあるのか、気になるところです。
国富コレクションには、旧松方コレクションが5点含まれるとのお話。日本の西洋美術普及への松方コレクションの影響の大きさを伺わせますね。
姫路は未訪問です。いつの日か城と美術館を訪問したいと思います。