映えるNIPPON
江戸〜昭和 名所を描く
2021年5月22日〜7月11日
府中市美術館
鳥瞰図絵師・吉田初三郎(1884〜1955)。
その名前は知っていたが、本展にて初めてその凄さを認識する。
吉田初三郎
《神奈川県鳥瞰図》
1932年、83.4×415.9cm
神奈川県立歴史博物館
神奈川県を中心にすると、東京はこのように見えるのか。
図の右端の方に、丸い山手線のほか鉄道網のみが描かれた、へのへのもへじ?のような東京。東海道線は勿論であるが、八王子から横浜を結ぶ、横浜線が重要なのだな。立川から川崎を結ぶ南武線はやや控えめ。
横4メートルを超える大画面いっぱいに肉筆で描かれた神奈川県が大迫力で迫ってくる。地名や観光名所などが細かく描きこまれている。三浦半島の横須賀美術館(観音崎、早水神社)や神奈川県立近代美術館葉山館(葉山)の所在地辺りを確認して、デフォルメされながらも確かな地図となっていることに感嘆する。富士山、箱根、天城山、存在がでかい大山。西に目を向けると、東海道線・山陽線を通じて門司へ、さらに釜山、上海、台湾までを一望する雄大さ。本作は神奈川県立歴史博物館が所蔵しているので、神奈川県民にはお馴染みの作品なのだろう。
吉田初三郎
《小田原急行電車開通記念》
1927年、63.8×93.6cm
江戸東京博物館
こちらは印刷物(ポスター)。新宿から小田原を結ぶ小田原急行の赤い線を画面中央にまっすぐ横切らせ、そこから地図を展開させる。
前掲作と違って小田原急行線がメインなので、細かく描かれるのは、新宿から小田原までの沿線地域、プラス神奈川県と一部の東京多摩地区となるが、雄大さは変わらず、西は釜山・上海・台湾まで一望し、さらに北も北海道や樺太まで一望する。小田原急行電車は、日本の中心に位置するのだ。
この2点に圧倒されるあまり、他の出品作を見る気力がゼロとなってしまったが、本展の構成は次のとおり。出品数は前後期あわせて100点強。
0章 歌川広重の《名所江戸百景》
1章 新たな視線、受け継がれる視線
1-1 開花絵
1-2 西洋画法と写真
1-3 小林清親の光線画
2章 名所を描く、名所を伝える
2-1 川瀬巴水の新版画
2-2 国立公園の絵画
2-3 観光宣伝グラフィック
3章 風景へのまなざし、画家たちのまなざし
3-1 富士と和田英作
3-2 民家と向井潤吉