東京でカラヴァッジョ 日記

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【その2】ティツィアーノとヴェネツィア派展(東京都美術館)

2017年01月29日 | ヴェネツィア派

ティツィアーノとヴェネツィア派展
2017年1月21日~4月2日
東京都美術館

 

第1章  ヴェネツィア、もう一つのルネサンス(1465-1515)

 

   本展のトップバッターは、超大型の版画。

ヤコポ・デ・バルバリ
《ヴェネツィア鳥瞰図》
1511年(1550年初刷)
ヴェネツィア、コッレール美術館

 

   続くは、肖像画。

ラッザロ・バスティアーニ
《統領フランチェスコ・フォスカリの肖像》
1460年頃
ヴェネツィア、コッレール美術館

 

    2011年の江戸東京博物館「ヴェネツィア展」を彷彿させる導入部。


   「ヴェネツィア展」では、《ヴェネツィア鳥瞰図》はこの緻密な版画に加えて複数の同種作品を展示し、ヴェネツィアの街自体の魅力を訴えていた。《統領フランチェスコ・フォスカリの肖像》は東京会場では出品されていないが、巡回先の仙台会場に出品されている。


   昨年の国立新美術館「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展とも比較してしまう。


・昨年のラッザロ・バスティアーニに代わり、ヴェネツィア風大型宗教画部門を今回担うのは、マンスエーティ。マンスエーティは、ベッリーニ工房出身で、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ジォヴァンニ・エヴァンジェリスタ(福音書記者聖ヨハネ大同信会)の《聖十字架の遺物》連作9点のうち2点を担当するほど活躍した画家のようだが、今回の出品作《博士たちとの議論》ウフィツィ美術館、はどうもピンとこない。

・アントネロ・ダ・メッシーナについては、そのヴェネツィア派への影響を解説するパネルにとどまる。

・クリヴェッリの出品はない。

・ジョヴァンニ・ベッリーニ《聖母子(フリッツォーニの聖母)》は、2011年「ヴェネツィア展」で来日したばかり、かつ、今一つピンとこない作品。ヤーコポやジェンティーレのベッリーニ一族の出品は望むべくもない。

・なにより、カルパッチョの出品がないのが致命的欠陥である。

・評価できるのは、ヴィヴァリーニ一族からバルトロメオの《聖母子》の出品。だが、今のところこの作品にピンときてない。

 

   期待していた初期ヴェネツィア派作品。

   ベッリーニの工房《キリストの割礼(ジョヴァンニ・ベッリーニに基づく)》カポディモンテ美術館蔵 - ジョヴァンニの原作は現存しないが、模作が30点以上あるというほどの人気画題だったらしい - により少し盛り上がりはあったが、ティツィアーノの初期作品《復活のキリスト》1510-12年頃、ウフィツィ美術館蔵、の投入も効果なく、テンションは低位のまま、最初のフロアを後にすることとなる。

 

バルトロメオ・ヴィヴァリーニ
《聖母子》
1465年頃
ヴェネツィア、コッレール美術館

 

 

ジョヴァンニ・ベッリーニ
《聖母子(フリッツォーニの聖母)》
1470年頃
ヴェネツィア、コッレール美術館

 

 

第2章  ティツィアーノの時代(1515-1550)


   第二フロアの展示室に入ると、正面にティツィアーノ《フローラ》がいきなり登場。

   図版のイメージからあまり期待していなかったのだが、実物の威力は違う。テンションが上がり始める。

  はやる気持ちを抑え、順路に従い、まずは右手の壁面の2作品から見ていく。パルマ・イル・ヴェッキオの《ユディト》と工房作《女性の肖像(スキアヴォーナ)》と、肖像画系2点。これは良い。

   それから、順路に従い、《フローラ》に進む。肌の質感。手に持つ小花束の描写。素早いタッチによる白い衣装。素晴らしい。長居する。


   しばらく地味系作品が続くが、その中では、初めて知ったティツィアーノの兄フランチェスコの作品や、セバスティアーノ・デル・ピオンボの肖像画《男の肖像》カポディモンテ美術館蔵、などの肖像画を楽しむ。


   そして、ティツィアーノ《ダナエ》の登場。初来日。魅力的なヌードに長居する。


   その左手の壁面、順路としては手前にあるのが、不思議なヌード作品、ベルナルディーノ・リチーニオ(帰属)の《裸婦》1525年頃、ウフィツィ美術館蔵。過去の修復の影響があるのかもしれないが、16世紀ではなく19-20世紀辺りのヌード画だと思ってしまう。

 

   続くアンドレア・スキアヴォーネの版画14点は、個人蔵とある。

    


第3章  ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ ― 巨匠たちの競合(1550-1581)


   第三フロアの展示室に入ると、正面にティツィアーノ《教皇パウルス3世の肖像》が登場する。75歳頃の男の肌と白髭の描写にこれまた長居する。

   しばらく、ティツィアーノ・シリーズ。

   ティツィアーノと工房《枢機卿ピエトロ・ベンボの肖像》1547年頃、カポディモンテ美術館蔵、ティツィアーノ《マグダラのマリア》、そしてティツィアーノと工房《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》1560-70年頃、国立西洋美術館蔵。


   結局、ティツィアーノ作品(工房を含む)の出品は計7点。意外に少ない?そんなもの?


   国立西洋美術館所蔵作は、よく考えると、ここは東京都美術館、常設展示からの移動ではない。同じ上野公園内、といっても国内他美術館から借りるのと同じような手間がかかるのだろうなあ。

 

   章題のとおり、ティントレット、パオロ・ヴェロネーゼの作品も紹介される。

   ティントレット作品にはそれほど惹かれるものはないが、ヴェロネーゼ作品では、《聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ》が好ましく、別画家によるルーヴル美術館所蔵《カナの婚礼》の模写作品も興味深い。


パオロ・ヴェロネーゼ
《聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ》
1565年頃
ウフィツィ美術館蔵

   本展の対象期間は、1581年までと、ほぼティツィアーノが亡くなった時(1576年)まで。その後のヴェネツィア派の展開は追わない。

 

   個人的には、初期ヴェネツィア派の章は残念であったが、ティツィアーノ4作品とパルマ・イル・ヴェッキオ2作品には満足。ティツィアーノ展なのだから充分としておこう。

 

   最後、ミュージアム・ショップを出て、下りエレベーターの手前に、恒例の写真撮影コーナー。

   今は《フローラ》だが、3/1から《ダナエ》に変わるとのこと。

 

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