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著作権の話

2012-04-06 14:22:17 | 著作権・知的資産

最近新聞で従業員により営業秘密情報を不正取得した記事と大手学習塾会社が教科書を丸々無断複製した記事が載っていました。

前者は不当競争防止法違反に係る事件であり、後者は著作権法に係る事件ということで適用される法律は違いますが、広い意味では知的財産権の保護、侵害に関する事件ということになります。

不当競争防止法は、事業者間の公正な競争や条約等の的確な実施を確保し国民経済の健全な発展に寄与することを目的とされています。

この法律は特許法、著作権法その他の知的財産法と異なり特定された特許や著作権を保護するものではありませんが、他の知的財産法令で保護対象となっていない事業者間での営業秘密その他の事項を対象としており、知的財産法の一つと考えられています。今回のケースは同法に定義されている不正行為のうち営業秘密不正行為に該当すると思われます。

後者の教材作成についての無断複製は著作権の問題となります。

教科書も新聞・雑誌と同じような編集著作物となると考えられますので編集発行者に著作権があります。

従って、著作権である複製権を持つ著作権者に無断で教材の複製物を作成することは以下の様な例外をのぞいて著作権の侵害となる可能性があります。

     営利を目的としていない学校その他の教育機関で教育担当者及び授業を受けるものは授業に使用する必要限度で公表されている著作物は複製することができる。

     公表された著作物は、教科書用図書に必要と認められる限度で掲載する(複製)することができる。

今回の事例では塾会社は株式会社であるので営利を目的としていること、一定の教科書用図書に該当しないこと、丸々の複製ですから必要限度を超えていることから著作権の侵害にあたる可能性が高いと考えられます。

又、編集著作物とは別に、複製された教材に載せられている著作物(原著作物)の著作権者に対しても著作権の侵害があるものと思われます。

著作権は知的財産権の一つですが、特許権その他の知的財産と異なり登録を要せず権利が発生します、著作物の利用に際しては権利の所在の確認と共に権利関係を契約書等によって明確にしておくことが必要かと思います。

行政書士会では行政書士で一定の研修を終了した著作権相談員が契約書等の作成をはじめ知的資産経営、管理等の支援を行っています。

他人が創作した著作物を利用する場合又は、自分の著作物を他の人に利用させる場合は専門家等に相談されることをお勧めします。

無断で利用した場合には、損害賠償を請求されたり利用料が発生したりします又、故意による場合刑事罰を受ける可能性もあります。

記述内容は筆者の私見ですので、詳細については各自ご確認ください。