この秋に生家を壊すことになっている。
もう誰も住んでないし、鉄筋コンクリートの大きな家なので困っちゃうのだけど。
でも、木も切らなきゃいけないし、私にとっては精神的にキツイ。
大きなモチノキと欅があって、
モチノキの赤い実を鳥が食べにくるのを眺めるのも好きだったし
屋上に登って欅の枝に手を伸ばして柔らかい梢枝に触るのが大好きだった。
屋上に寝袋を持って登って流れ星を見たりしたこともある。
庭の百日紅のすべすべした木肌を触るのも好きだったし
紫陽花の時期に紫陽花を切ってきて花瓶に刺したり
梔子に青虫がついて、それを当時飼っていたヒヨドリが食べたり
灯籠の上に餌を巻いて雀が来るのを見たりした。
毎年祖母が鷺草を咲かせていたことや菊を育てていたこと。
大きな柱があって、うちのダンナさん小さい頃それに登ったりしてたわ
縁側でスイカ食べたり、ナスの漬物食べたり、花火したり
真夏に仏間の窓を開け放して昼寝したりも。
母に怒られて毎日のように泣いて、自分の価値を見出せなくて
父のことも怖くて、父母に比べてなんて自分は馬鹿なのか
私のように見た目も良くない、頭も良くない、こんな人間存在して良いのか
そういうことをあそこで考えながら生きていたこともある。
良いことも悪いこともあった。その場所がなくなる。
うちのダンナさんは私とは小さい頃から知っている間柄で
私の生家についての思い出も色々あるので私の物悲しい気持ちは分かるみたいだけども
ちょっと精神的にキテル気持ちまではわからないようだ。
分からなくて当たり前だ。
実妹ですら、私の物悲しい、どうしようもない思いは共有できないんだから。
時代の移り変わりよ。こればっかりはさ、もうどうしようもないのよ。
壊すことは納得してる。わかってるの。
もし住み続けるにしても直すのにすごくお金かかるし、広すぎて維持できない。
なので、仕方ないの。一つの時代が終わるんだなと。そう思ってる。
ありがとう。生家よ。
お前がそこにもう存在しなくなると思うと、胸が潰れそうです。