会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

スルガ銀、前期業績下方修正へ アパート融資に引当金(日経より)

スルガ銀、前期業績下方修正へ アパート融資に引当金(記事冒頭のみ)

スルガ銀行が発表済みの2018年3月期連結業績を大幅に下方修正するという記事。

「シェアハウス向けだけでなくアパート向け融資でも審査書類の改ざんなどの疑惑が浮上し、貸し倒れに備えた引当金を追加計上する必要があると判断した。」

「上場企業がいったん発表した業績を大幅に修正するのは極めて異例。経営陣が不正の全体像を把握できていないことの裏返しで、金融庁はスルガ銀のガバナンス(企業統治)が欠如しているとみている。」

「貸倒引当金を追加計上するのは、シェアハウス融資で判明した借り入れ希望者の所得や預貯金額を水増しする不正が、中古アパート融資などでも横行していた可能性が浮上したためだ。」

決算発表のときの数字は、監査が済んでいない未確定の数字なのですから、その後、その数字を修正すべきことを示すような情報を入手したら、当然修正すべきでしょう。スルガ銀行の場合は、決算発表の段階では、融資に関する不正をまだ調査中といっていたのですから、むしろ、確定数値であるかのようにして発表したこと自体が間違っていたのでしょう。

記事によれば、金融庁は、決算を修正すること自体が、ガバナンスの欠如だといっているそうですが、それは会計の理屈・建前を理解していない間違った見方です。

スルガ銀行 イバラの道(上)「証拠隠滅」「時間稼ぎ」にいら立つ金融庁(朝日)(記事前半のみ)

「スルガ銀行の社内調査に当たった危機管理委のメンバーは、久保利英明氏(日比谷パーク法律事務所、写真下)や国広正氏(国広総合法律事務所)ら3人。スルガ銀行と他の業務で委任関係があり、日本弁護士会連合会の第三者委員会ガイドラインに準拠した要件を満たしていなかった。

スルガ銀行と利害関係のある顧問弁護士も含まれていた。調査対象も横浜東口支店、渋谷支店、二子玉川支店の3支店と同行側が指定した範囲にとどまり、お手盛りとの批判が出ている。報告書全文も公表されていない

特に、久保利氏の日比谷パーク法律事務所は、日本アイ・ビー・エムとの勘定科目のシステムをめぐる訴訟でスルガ銀行の代理人を務めた(日本アイ・ビー・エムが約41億7000万円をスルガ銀行に支払うことで決着)。スルガ銀行とは「お互い持ちつ持たれつの関係」とも批判された。」

こういう独立性のない弁護士に依頼して、お茶を濁そうとしていたことは、ガバナンスの欠如でしょう。

スルガ銀行 イバラの道(下)警視庁は立件に及び腰。株価急落を受けた民事訴訟が焦点だ(朝日)(記事前半のみ)

「金融当局には思い出したくない前例がある。旧村上ファンドを率いた村上世彰氏らが相場操縦した疑いで証券取引等監視委員会が調査をしていた件で、村上氏の第三者委員会(委員長・元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士)が「相場操縦罪は成立しない可能性が濃厚」との調査結果をまとめ、先手を打たれたのだ。監視委は検察庁と立件について協議を進めたが、今春、刑事告発を断念した。

スルガ銀行の件でも、第三者委が先手を打ってくる可能性はある。第三者委と金融庁の結論が同じ方向なら、警視庁は立件しやすい。逆に異なる場合、警視庁はどのような罪で立件するか悩み、立件自体が見送られる可能性が高まる。」

訴訟のリスクも...

「個人株主らからはスルガ銀行経営陣の責任を問う訴訟が起こされる可能性もある。いわゆる株主代表訴訟だ。経営陣のほか取締役を監督する監査役、会計監査を担当した監査法人などが被告になり得る。」

「さらにやっかいなのは、スルガ銀行の株価が半減していることだ。年金資金を預かる信託銀行や個人投資家から民事訴訟を起こされる可能性も高まっている。...

現時点で本格的な動きはないが、金融庁検査の結果、法令違反や行政処分が認定されれば、民事訴訟の具体的な検討が始まる見通しだ。」

不正な融資が長期間続いていて、間違った融資資料に基づく過年度決算が引当金不足だった場合には、監査人の責任も問われるでしょう。

今は、日弁連方式の第三者委員会で調べているそうです。

第三者委員長「スルガ銀社長の覚悟感じた」 融資問題で(朝日)(再掲)

「――「日弁連方式」とは。

「スルガ銀は社内調査の一環で危機管理委をつくったが、顧問弁護士もメンバーで、報告書は公表されない。日弁連方式は、調査の範囲や手法、報告書の中身まで、委員会の権限で進める。独立性が高く、依頼者がコントロールできない仕組みで、世の中の信用を得やすく、改善策や企業の再出発にもつなげやすい」

 ――スルガ銀の社内調査の評価は。

「事実認定は不十分なところがあるが、問題点はかなり踏み込んで評価した印象だ。ただ我々は真っ白な状態で調べ、問題点をさらに深掘りしたい」」

スルガ銀行は、一体どこで道を間違えたのか
ずさん融資で異形の高収益銀行が暗転
(東洋経済)

「ある金融機関の幹部は、「貸し倒れ防止やトラブル回避、顧客保護のためにも、業者選択は審査の一環だ」と主張する。「スルガ銀行はわれわれが取引しない業者とも普段から付き合っている」。実際にシェアハウス以外の中古一棟マンションでも、「改ざんは一部認識している」とスルガ銀行自身が認めている。第三者委員会では、ほかのアパマンローンについても調査するもようだ。」

スルガ銀行は、全部、販売会社のせいにして逃げ切ろうとしているように見えますが、仮に販売会社の不正だとしても、財務報告にかかる内部統制の重要な不備であることには違いありません。

(補足)

スルガ銀行からプレスリリースが出ました。

当社の業績に関する一部報道について(PDFファイル)

「シェアハウス関連融資等の回収可能性については、現在、検討を行っており、2018年3月期決算における貸倒引当金の積み増しなど金額を精査中です。 」

スルガ銀、発表済み決算の修正検討 融資資料改ざん問題(朝日)

「朝日新聞の取材では、審査資料の改ざんはシェアハウス投資への融資だけでなく、スルガ銀が注力する中古1棟マンション投資への融資でも横行しており、一部では保証家賃の未払いなどが発生。スルガ銀もこうした事態を把握し、シェアハウス以外の不動産投資向け融資でも引当金を積み増すべきだと判断したとみられる。」
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