金融サミットと同時に開催されていた金融安定化フォーラムの提言が金融庁のサイトに掲載されています。
そのうち、「金融システムにおける景気循環増幅効果への対応」という報告書(金融庁による概要)からの抜粋です。
「FASB 及びIASB は、関係する規制当局、金融機関及びその監査人に対し、発生損失に対する貸倒引当金を決定する上で、現行の基準において、判断の利用が求められていることを再確認する声明を公表すべきである。」
今さら何を言うのだろうという感じがしますが、日本の場合は、あの有名な目黒検査官にこのことを教えてあげるべきでした。
もっとも、報告書では引当が少なくてもよいというのではなく、むしろ前倒しで引き当てする方が適切だといっています。
「Earlier identification of credit losses is consistent both with financial statement users’ needs for transparency regarding changes in credit trends and with prudential objectives of safety and soundness.」
「より早期の信用損失の認識は、財務諸表利用者の透明性に対するニーズと、安全性・健全性という目標の両方に合致する。」
dynamic provisioningという言葉も出てきますが、報道によればIASBは反対しているようです。
金融商品の評価については以下のような項目が注目されます。
「3.4 会計基準設定主体及び金融機関監督当局は、公正価値評価を裏付けるために必要なデータやモデリングが脆弱な場合には、評価される金融商品に関する評価性引当金又は調整金の利用を検討すべきである。」
「3.5 会計基準設定主体及び金融機関監督当局は、時価価値会計に潜在的に伴う逆作用効果を弱めるよう、関連する基準を変更する可能性を検証するべき。
このような潜在的な影響を減らすために考えうる方法としては次のようなものがある。
○ 会計モデルを改善し、時価会計の利用を信用仲介金融商品に限定する。
○ 金融資産カテゴリー間の移動。
○ ヘッジ会計要件の簡素化。」
会計処理を変えて、金融商品の評価を緩くしても金融機関のキャッシュ・フローにはまったく影響がありません。現在の問題は、世界的に資金が回らないということですから、ほとんど役に立たないように思われます。
ただし、3.4という項目に関しては、評価を甘くするというよりは、評価に関して大きな不確実性があるときは、利益過大計上を避けるために、引当金を計上(または評価の調整)を行うのが適当ということですので、むしろより保守的な会計処理をすべきという趣旨です。
(時価はその金融商品にまつわる不確実性を加味して決定されるはずなので、それに追加して何らかの引き当てするというのは、時価会計の考え方とは矛盾します。)
「Standard setters and supervisors should explore whether firms should be equired to hold valuation reserves or to otherwise adjust valuations to avoid overstatement of income when significant uncertainty about valuation exists. For financial instruments that are not actively traded, insufficient market depth or reliance on valuation models using unobservable inputs that are difficult to verify may create considerable valuation uncertainty.」
日経新聞などでは金融商品の評価を緩くする話しか報じられていませんが、世界的に本当にそのような方向なのかは、よく確かめる必要がありそうです。
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