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丸紅子会社も関与か/広島ガス開発架空取引

asahi.com:丸紅子会社も関与か/広島ガス開発架空取引-マイタウン広島

東証2部上場、広島ガスの子会社における架空取引事件の続報です。丸紅の子会社やパナソニック電工の子会社も取引に関与し、その従業員が架空取引で主導的な役割を果たしていたとされています。

HGK循環取引 広ガス外部調査委結果

この記事では、広島ガスの外部調査委員会の報告書を取り上げています。「「取引がいつ始まり、本当の目的は何だったのか」など、真相は解明されなかった」そうです。

「調査は課長らへの聞き取りが中心。課長は1999年頃、広島市内の建設会社社員から誘われ、2004年頃に実態が無い取引と気付いたが、取引額が約50億円に上りやめられなかったと話したという。だが、取引に関係した企業約20社のうち、調査できたのは5社のみ。課長を誘ったという建設会社社員とは連絡が取れず、大迫弁護士は「強制力のない調査手法としては限界だった」とした。」

この事件では、架空取引を実態のある取引のように会計処理していたわけですから、過年度にさかのぼって決算を修正するのが原則でしょう。しかし、売掛金や棚卸資産を水増ししていたというのとは違って、外部と共謀した不正であり、実際にキャッシュ(あるいは手形)の動きもあるわけですから、架空取引の仕訳を取り消せば済むという話ではありません。

架空取引に関連して受け取ったキャッシュは返すべきものですから未払金(あるいは預り金)に計上し、支払ったキャッシュは未収入金に計上したうえで、関係した会社間で債権債務を確定し、さらに時効や相手先の返済能力も考慮して、必要であれば引当を行うといった作業がおそらく必要なのでしょう(あるいはこれとは別の修正方法もあるかもしれません)。

とても短期間で済む作業でもなく、また、相手先の協力がなければ実施できません。

広島ガスの場合は、この子会社を法的整理し、親会社に被害が及ばないようにしたようです。しかし、被害を受けた取引先がそれで納得するはずまもなく、訴訟も起きているようです。また、会計的には倒産するまでは連結子会社として連結決算に含めていたわけですから、過年度修正の義務がなくなるわけでもありません。

きちんと後始末するのが非常に困難な不正といえそうです。

当社子会社の不適切な取引に関する調査結果等のご報告(PDFファイル)

循環取引の一般的な性格について次のように述べています。

「循環取引は循環する限り破綻しないが,始まりは小さな取引額でも利益分が上乗せされて繰り返し循環するうちに取引額が膨らむ。そのようにして取引額が膨らんでしまうと,停止した瞬間に巨額の損害が発生する。従って,そのような状況になるともはや止めることは困難であるが,永遠に続けることはできないので,いつかは破綻する。」

この報告書では、取引のきっかけは外部からの勧誘であり、子会社の従業員が主導したものではないとされています。

また、不正取引に関与したのは子会社の従業員1名だけとされています。ひとりで不正が実行できた背景として、内部統制(統制環境)の不備が挙げられています。

「HGK社における建材取引については,見積り,受注,販売契約,購入要求,購入指示,請求受け,販売先変更,工事完成報告,請求,支払通知受け,入金消し込み,債権管理について1人が担当し,社外に対して1人で対応する体制だった。また,社内に対しても,上述の
業務に関連する稟議書類・管理書類もすべて1人で起票する体制であったため,xは,書類の整合性を保つことが可能な状況であった。

また,このような自己完結的取引の実施可能な状況が,取引を始めた平成11年度から発覚までの10年間以上継続され,他の担当者へ変更や複数人の取引への介入などの措置が行われていなかった。」

調査委員会の検討対象外だったのかもしれませんが、過年度決算への影響については、架空取引の売上・売上原価累計額が示されているだけで、修正の要否についてはふれていません。

当サイトの関連記事(「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準(案)」について)

ASBJの基準案では、「過去の誤謬の修正再表示が実務上不可能な場合の取扱い」には踏み込めなかったようです。
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