ソフトバンクの業績の実態とは?
ソフトバンクグループの決算(2015年4~12月)を取り上げた記事。子会社である米携帯大手スプリントが本当に改善しているのかどうかを解説しています。
「連結ベースで1.9兆円のEBITDAのうち、最も貢献したのは国内通信の9302億円だが、スプリントは国内通信に次ぐ7448億円のEBITDAだったことを強調した。孫社長はスプリントについて、「これから稼ぎ頭の一つになる」とまで語っている。」
「4~12月の9カ月間で8億ドルの固定費を削減。これらの結果、4~12月期は3億ドルの営業利益と黒字転換した(前年同期は巨額減損の計上もあり、22億ドルの赤字)。」
悪い材料の方は...
「米国で上場しているスプリントは、1月26日に第3四半期決算(2015年4~12月期。米国会計基準)を公表している。第3四半期におけるEBITDAは54.9億ドル。コスト削減は進んだが、償却費が51.9億ドル(前年同期は約38.9億ドル)と膨らんだ。
また、有利子負債が多く、支払利息は16.3億ドルと巨額で、税引き前利益は13.1億ドルの赤字。税引き後は14.4億ドルの赤字だ。フリーキャシュフローも依然としてマイナスが続く。現金・現金同等物は、昨年12月末までの9カ月間で18億ドル減って21億ドルになっている。」
「四半期ごとに見ても、第2四半期(同7~9月期)は0.02億ドルの営業赤字だったが、第3四半期(同10~12月期)は1.97億ドルの営業赤字と赤字幅が拡大。改善基調にあるとは言えそうもない状況である。」
「...スプリントの株価は2ドル台で低迷している。このまま株価の低迷が3月末まで続くと、スプリント事業を減損するかどうかの判断を迫られそうだ。」
投資した資金が回収されているかどうかは、EBITDAから税金や設備投資を引いたところで見なければならないのでしょう。EBITDAばかりを強調しているのだとしたら、少しおかしいように思われます。
昨年の消えた減損事件についてもふれています。
「スプリントは2014年10~12月期に21億ドルの減損損失を計上したが、ソフトバンクは会計基準の違いなどからスプリントにおける減損を計上しなかった。孫社長は「減損したつもりで経営する」と語っていたが、この3月末はいよいよ、減損しなければならない事態となる可能性もある。」
スプリントは米国基準、ソフトバンクはIFRS(減損処理の際には時価ではなく回収可能価額を使う)で、スプリント株の株価が下がったとしても、回収可能価額はそれより大きいと主張することは可能ですが、限度があるでしょう。また、ソフトバンクの個別決算は、日本基準であり、子会社株式の評価損計上の判定には、時価が使われます(上場子会社の場合)。株価があまりに下がれば、個別決算で減損ということはありえます。
2016年3月期 第3四半期 決算発表(ソフトバンクグループ)
(ソフトバンク決算説明会資料より)
(スプリント株価)
スプリントのIRのページ
http://investors.sprint.com/?ECID=vanity:investors
日本基準、IFRS、米国基準の違いにもふれています。
↓
巨額の「のれん」の減損は、なぜ起こったか、どう防ぐか(2014年5月)(KPMG)
日本の金融機関の事例も取り上げています。米国基準と日本基準の両方の決算を公表していますが、米国基準では巨額ののれん減損を計上しながら、日本基準ではのれんがそもそも計上されていなかったそうです。(当局の意向に沿って?)メガバンクの再編が済むまで、企業結合会計基準の導入を遅らせた影響なのでしょう。
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