「監査基準報告書600「グループ監査」の改正について」(公開草案) の公表について
日本公認会計士協会は、監査基準報告書600「グループ監査」を改正する公開草案を、2022年10月18日に公表しました。改正後は、「グループ監査における特別な考慮事項」という報告書名となります。
「改正監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(公開草案)等の概要」という30ページ弱の説明資料もいっしょに公表されています。
(報告書名の変更も改正のポイントのひとつです。日本の基準が参考にしている国際監査基準では、以前から「Special Considerations-Audits of Group Financial Statements (Including the Work of Component Auditors)」であり、原文に近づけたことになります。「他の報告書もグループ監査に当然に適用される前提」(概要より)であることを強調する趣旨のようです。ただ、国際監査基準では「グループ監査」ではなく「グループ財務諸表の監査」です。せっかく変更するなら、国際監査基準のとおりにした方がよかったと思います。その方が、それ自体がひとつの論点である「グループ財務諸表」に注意を向けることになったでしょう。)
国際監査基準で、ISA600(改訂)として確定版が2022年4月7日に公表されたことに対応する改正です。
主に以下の事項の見直しを実施したとのことです(概要より)。
(1) 品質管理への積極的な取組み(リスクに基づくアプローチ、グループ監査品質の管理と達成、情報及び人へのアクセス制限、重要性)
(2) グループ監査基準の目的適合性の維持(適用範囲、他の基準との連携、監査調書)
(3) グループ監査人と構成単位の監査人の強固な双方向のコミュニケーションの強調
(4) 職業的懐疑心の重要性の強調
(5) 適用の柔軟性(Scalability)への対応
(1)は、重要な構成単位の概念の廃止(監査の作業を実施する構成単位の決定の柔軟性の確保など)が含まれています。
(2)の「適用範囲」では、「グループ財務諸表」の定義を具体化しています。「監査調書」では、文書化を要求される事項がより細かくなっているようです。
(4)の関連では、「構成単位の監査人の作業の妥当性の評価」に関して詳細に規定されているようです。
(5)では、(重要な構成単位の概念の廃止にも関係しているのでしょうが)「重要な構成単位の財務情報に対して一律にリスク対応手続を求めるのではなく、評価したグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応し、十分かつ適切な監査証拠を入手するために適切なアプローチをグループ監査人が決定する必要があることを強調」しているそうです。
その他の改正ポイントには、定義の変更(「グループ監査チーム」を廃止し「グループ監査人」を新設など)などがあります。
適用時期は...
重要な海外子会社がある場合などは、改正内容を早めに把握し、事前に従来のやり方を点検し、準備しておくのがよさそうです。
マイナーな論点としては、「結合財務諸表(Combined Financial Statements)」(第14項)の訳出」というのもあります。
「実例として結合財務諸表を使用するケースは見つからなかったものの、IFRS適用企業が増えてきていることを踏まえると、今後結合財務諸表の作成が求められるケースに備えるため」とのことです。
会社間で支配従属関係があれば、連結財務諸表ですが、支配従属関係はないけれどもひとつのグループだという場合は結合財務諸表なのでしょう。韓国の財閥が結合財務諸表を公表しているということを聞いたことがあります。