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ワイヤーカード、IT業界寵児から転落の軌跡(WSJより)

ワイヤーカード、IT業界寵児から転落の軌跡(有料記事)(無料で読める場合もあるようです。)

ワイヤーカードの不正会計問題の記事。

これまでの経緯の他、不正の中身についても少しふれています。

「ワイヤーカードは6月18日、フィリピンの2つの銀行に預金してあると監査会社に報告していた20億ドルが、全く存在していないことを明らかにした。この金額は、同社のこれまで10年以上にわたる利益の合計額に相当する。」

「ワイヤーカードがあまりにも短期間で崩壊したため、捜査関係者はまだ、実態解明に着手したばかりだ。検察当局やワイヤーカード、同社の監査会社が解明しようとしている疑惑の大枠は次のようなものだ。ワイヤーカードが営業ライセンスを持たない国々で、独立した立場にあるとされる第三者的な複数のパートナー企業が、ワイヤーカードのために決済サービスを行ったとされている。だが、そこから生じた収入が入っているはずの銀行口座は実際には存在していなかった。」

「ドイツ検察当局に加えシンガポール、フィリピンの当局が捜査を進めている。検察当局と監督当局は、消えた20億ドルがワイヤーカードの業績不振を覆い隠すためのものだったのか、資金流用に絡んだものだったのか、またはその両方なのかを解明しようと努めている。」

シンガポールの会社とのあやしい取引についてふれた部分。

「行方不明の20億ドルに関するドイツの捜査の焦点は、ワイヤーカードのサードパーティー・パートナーに当てられている。このうちの1つが、シンガポールに本拠を置くSenjo Groupだ。」

「Senjo の決済ビジネスは、サードパーティー・アクワイアラーと呼ばれる。それには、ワイヤーカードがライセンスを持っていなかったアジアの市場への新規参入を手助けする意味合いがあった。ワイヤーカードは取引収入の一部を得ており、その収入は受託者が管理する銀行口座に行き着くとしてていた。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した同社のデータによると、Senjo は近年、ドバイとフィリピンにある類似の2社とともに、ワイヤーカードの売上高の半分以上、利益の最大95%を生み出していた。

シンガポールの法人登記簿によると、Senjo の所有者の1人は、モンタナ州の農場に住むリチャード・ウィレット氏だ。同氏に接触することはできなかった。最近、同氏の自宅の電話に出た女性は、彼が納屋にいるかもしれないと答えた後、「間違った人に電話をかけてきている」と述べた。

マーザリク氏(ワイヤ-カードのCOO)は2015年末、年度末が迫っていた15年度の営業利益の不足分をどう穴埋めするかについて、シンガポールにいるワイヤーカードの幹部と話し合った。WSJが確認した12月29日付のメールでマルサレク氏は、「年度末までに何とかできるか、センジョーの友人に聞いてみる。時間が少し迫っている」と述べていた。

WSJが確認したSenjoの電子メールおよび内部告発者による通知を受けた法律事務所の調査によると、Senjoおよびその他決済会社の社員は2016年当初数カ月間ソフトウエア・ライセンスに関する330万ユーロ(約4億円)の取引について、前年に行われたように見せかけるため契約やインボイスの日付を付け替えていた。電子メールによれば、利益はワイヤーカードによって2015年分として記載された。

ドイツの捜査当局はワイヤーカードのサードパーティー・パートナーたちが行った決済処理がワイヤーカードの貸借対照表に不明朗な箇所を作り出す一因になったのかどうかについて調べている。ワイヤーカードの社外特別監査人KPMGは今年4月、サードパーティーによって生み出されたすべてのクレジットカード決済による収入本物のものかどうかは確認できなかったと述べている。」

日付書き換え問題については内部通報がありましたが、その不正疑惑の調査体制は独立性が欠如していたようです。

「ワイヤーカードは調査を行うためシンガポールの法律事務所ラジャ・アンド・タンと契約した。WSJが確認した電子メールによれば、ワイヤーカードのコンプライアンス・チームは、前出のマーザリクCOOと告発対象となった取引を行った幹部社員がワイヤーカードの取締役会によって調査を監督する担当者に指名されたことを懸念していた。

電子メールによると、シンガポールのコンプライアンス・チーム責任者はワイヤーカードのグローバル・リーガル・チーフに対し、「われわれの保有する書類に基づけば、これは思慮を欠いた状態と思われる」と指摘している。

ワイヤーカードは昨年、ラジャ・アンド・タンによる調査では不正・腐敗に関する決定的証拠は見つからなかったと表明した。同社は最終報告の全文を公表していない。また、調査について自社から独立したものと位置づけている。」

監査の面からいうと、現金の残高を押さえられなかっただけでなく、売上の半分、利益のほとんどを占める取引相手3社の実態をきちんと把握できていなかったようです。実証手続とその前提となるビジネスの理解の両方に不十分な点があったということなのでしょう。また、日本企業でもありがちですが、不正調査の独立性欠如にも目を向けるべきだったのでしょう。2015年の利益先行計上疑惑を適切に監査していれば、こんな大ごとにならなかったかもしれません。

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