シャープの経営危機の原因について論じた記事。設備の減損処理を回避するために経営判断を誤ったという見方を紹介しています。
「・・・2007~08年には絶頂期だった。液晶テレビ「アクオス」では大型液晶パネルから完成品まで自社生産し、テレビのフレームには「世界の亀山モデル」の文字が誇らしげに記されていた。
さらに「大きいことはいいことだ」とばかりに大型化路線を進め、09年10月には最新鋭の「第10世代」と呼ばれる堺工場を稼働させた。総投資額は1兆円にものぼるこの工場が結果的に大きな落とし穴となった。
元シャープ液晶研究所技師長で立命館アジア太平洋大学の中田行彦教授(経営学)は堺工場について「過去の成功体験から実行したものと思われるが、規模が大きくなりすぎ、リスクの高い投資だった」と分析する。
堺工場では1枚のガラスから42型用のパネルが15枚作ることができるなど大型パネルの大量生産が可能で、自社のテレビだけでは余ってしまう。そこでソニーにもパネルを供給することにしたが、テレビ事業の不振もあってソニーからの調達量は減っていった。
そして東日本大震災後の円高や地デジ特需の反動、海外景気の減速などテレビ市場に逆風が吹く中、決定的な判断ミスがあったと家電担当アナリストが語る。
「昨年夏から秋にかけて堺工場の増産を指示してしまった。稼働率が低下すれば、工場の資産価値が目減りし、減損処理で損失計上を余儀なくされる。増産は経営責任を回避するための保身と受け取られても仕方のない判断だった」
ところがこれが見込み違いだったという。50~70インチの大型テレビが欧米や中国の富裕層の間で一定数売れたが、「シャープがもくろんでいたほどではなく、赤字と在庫がたまった」(同)。」
1兆円の投資ともなれば、減損処理までいかなくても、減価償却費だけでも重荷になります。たしかに、稼働率を上げて利益を確保しようとするインセンティブになりそうです。
設備投資自体の失敗もさることながら、無理に稼働させたのが大きな判断ミスだったという、(このとおりだとすれば)管理会計の教科書に出てきそうな事例です。
同社の有報をみてみると、棚卸資産は 486,060百万円(2011年3月期)から527,483百万円(2012年3月期)に増加していますが、売上の方は、3,021,973百万円から2,455,850百万円に急減しており、在庫の回転は悪化しています。
もっとも、こちらの記事によれば、この工場は、鴻海の資本を入れてさらなる生産能力増強を検討しているようです。
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シャープ堺工場の能力増強を検討、投資規模1000億円以上も=鴻海(ロイター)
「堺工場の液晶パネル生産能力は現在、ガラス基板ベースで月産7万2000枚。敷地面積は約127万平方メートルで、東京ドームが約28個入る。林氏は「工場の敷地を活用すれば最大12万枚まで拡張できる」とし、年末から来年にかけて増強の判断をする考えを示した。仮に月産12万枚まで増強すれば、1000億円以上の投資になるという。」
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