金融庁は、「記述情報の開示に関する原則」と「記述情報の開示の好事例集」を、2019年3月19日に公表しました。
「「記述情報の開示に関する原則」は、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の企業情報の開示に関する提言を踏まえ、「財務情報以外の開示情報である、いわゆる「記述情報」について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたもの」とのことです(全19ページ)。
特に、「投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話につながる項目である、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報を中心に、有価証券報告書における開示の考え方等を整理すること」が目的となっています。
内容は「総論」と、有報記載項目ごとの「各論」に分かれています。
「総論」では以下の原則が示され、それぞれ説明がついています。
「1-1. 記述情報は、財務情報を補完し、投資家による適切な投資判断を可能とする。また、記述情報が開示されることにより、投資家と企業との建設的な対話が促進され、企業の経営の質を高めることができる。このため、記述情報の開示は、企業が持続的に企業価値を向上させる観点からも重要である。
企業は、記述情報及びその開示のこのような機能を踏まえ、充実した開示をすることが期待される。 」
「2-1. 記述情報は、投資家が経営者の目線で企業を理解することが可能となるように、取締役会や経営会議における議論を反映することが求められる。」
「2-2. 記述情報の開示については、各企業において、重要性(マテリアリティ)という評価軸を持つことが求められる。」
「2-3. 記述情報は、投資家に対して企業全体を経営者の目線で理解し得る情報を提供するために、適切な区分で開示することが求められる。 」(区分とはセグメントのことのようです。)
「2-4. 記述情報の開示に当たっては、その意味内容を容易に、より深く理解することができるよう、分かりやすく記載することが期待される。 」
「各論」では、以下の有報記載項目ごとに、「法令上記載が求められている事項」、「考え方」、「望ましい開示に向けた取組み」を示しています。参考として、米SECのガイダンスの内容も紹介されています。
1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
1-1. 経営方針・経営戦略等
1-2. 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
1-3. 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2. 事業等のリスク
3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(Management Discussion and Analysis、いわゆる MD&A)
3-1. MD&A に共通する事項
3-2. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
3-3. 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
「原則」という名前がついていますが、開示府令(有報等の「記載上の注意」)に関する金融庁の解説ぐらいのものでしょうか。
意見募集に寄せられたコメントへの対応をまとめた資料も公表されています。「原則」を理解するのに役立ちそうな情報も含まれています。
↓
「記述情報の開示に関する原則(案)」に対する主なパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方
「重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」に関するコメントへの金融庁考え方より。
「会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、ご指摘のとおり「経理の状況」の注記に記載することも考えられますが、現状の我が国の会計基準にそのような定めはないと認識しております。そのような中でも、DWG報告にもあるように、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に関する情報は、投資判断・経営判断に直結するものであり、経営陣の関与の下、より充実した開示が行われるべきと考えられます。そこで、開示府令においては、MD&A に項目を設けて、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響など、「経理の状況」に記載した会計方針を補足する情報の記載を求めることとしています。」
こういう事項は監査リスクにも関係するので、財務諸表注記でなくても、有報に記載されていれば、監査人がKAMを記載する際には便利でしょう(会社側の抵抗が少なくなる)。
「記述情報の開示の好事例集」は、金融庁の勉強会で投資家・アナリストから紹介された開示例を、「記述情報の開示に関する原則」に対応する形でまとめたものです(全79ページ)。一部、任意の開示書類における開示例も含まれています。随時更新を⾏う予定とのことです。
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