東レが、クラウドファンディング会社から、3億5000万円の「債務存在確認」訴訟を起こされているという記事。東レの部長(懲戒解雇されている)が不正な行為をやっていたようです。架空売上の疑いもあります。
「東京・港区に本社を置く「オリエントコミュニケーション」(以下「オリ社」)なる会社が、東レの「水処理機器」100台を購入する資金として、2017年9月、C社から3億5000万円の融資を受けた。返済は半年後の2018年3月に一括という契約だった。
オリ社とC社はこれ以前には何の取引もなく、そもそもこの融資案件は東レ側からの依頼だった。
そもそもこのオリ社、大手民間信用調査会社によると、資本金1000万円の「経営コンサルタント」で、従業員は1名。利益もほとんど計上されておらず、いわば代表者の個人会社である。少なくとも、世界規模の東レが有力製品を100台規模で販売する正規の取引相手とは到底考えられない。
当然C社は、取引実績も信用力もないオリ社に単独で融資をするリスクを考慮したようで、東レがC社に連帯して債務保証を約するならば、しかも東レ社長の正式な公印がある契約という条件を付ける。
そして実際、融資の「申込書」には、この金銭消費貸借契約にかかわる一切の権限を、自社の「水処理システム事業部長」(以下「F部長」)に委任するという日覺社長名の「委任状」が添えられ、もちろん代表取締役社長としての印鑑が押印され、さらにその印が公的なものであることを証明する東京法務局発行の「印鑑証明書」も添えられていた。そして融資は実行された。
ただ、オリ社が期日に返済できなかったため、期限を9カ月延長して2018年12月とする「変更合意書」を取り交わしている。その際にも、東レはC社に対して同様の社長印の「委任状」と「印鑑証明書」を改めて発行している。
しかし、変更した期日になってもまた返済がなかったため、C社は当然ながら、連帯して保証している債務の返済を東レに求める交渉を行うが、契約当事者である東レの「F部長」とは連絡が取れなくなる。
ばかりか、東レ本社を訪問して用向きを伝えても、法務担当者に「直接の連絡はまかりならぬ、電話も同様。話はすべて指定の弁護士事務所に申し入れろ」という強硬な姿勢で門前払いにされてしまう。
やむなく指定の弁護士事務所に連絡し、連帯した債務保証にかかわる「社長印付き委任状」「印鑑証明書」原本を含めた証拠資料を直接提示し、保証の実行を求めた。
ところが弁護士事務所側は、最終的に年が明けた本年1月30日、「本件連帯保証にかかるものを含めいかなる債務も負担するものではない」と回答し、そもそもオリ社の債務を連帯して保証した事実すら完全に否定した。ことやむなきに至り、C社は提訴した、という次第である。」
東レ側は、社長の代表印がある「委任状」と「印鑑証明書」は「偽造」されたものと主張しているそうです。
「言うまでもなく、企業にとって代表者の公印および印鑑証明書は最重要書類であり、然るべき担当部署が厳重に管理する。F部長がC社に手交した公印と印鑑証明書はまぎれもない真正なものであり、いわゆる地面師など詐欺集団が行う「偽造物」ではない。にもかかわらず東レが「偽造」と主張する根拠は不明である。
仮に東レが主張するように、連帯債務保証が会社承認のものではなくF部長の独断行為であるのなら、厳重に管理しているはずの最重要書類を社員が簡単に、しかも複数回も持ち出せるとは、企業としてのガバナンスがまったく機能していないという問題が浮上することになる。」
本当に「水処理機器」100台の購入(東レからすれば売上)取引があったのか...
「もちろん、この融資の目的となっている水処理機器は、実際に存在する。ただし、東レからオリ社への販売はペーパー上のもので、実際には、東レが発注したメーカーの倉庫に保管されたままという。
「この融資の対象となっているのは、そのうちの100台。F部長の説明では、この機器は当初、バングラデシュで販売する予定だったところ、現地でのテロ事件などの影響で頓挫してしまい、売り先のない在庫として抱えている状態になってしまった。それを一時的にオリ社に販売した形にし、その間に新たな売り先を見つけてくる算段だったようだ。F部長自身も、上司や担当役員である専務から『この在庫をどうするんだ!』と責められていると嘆いていた」(同)
このF部長の説明が真実だとすると、東レとしては不良在庫を関係会社に「飛ばした」ということになる。しかも、その「飛ばし」行為に債務保証をしている。コンプライアンス上、重大な疑義が生じることになる。」
オリ社には同じ水処理機器を全部で150台販売したことになっており、訴訟を起こした会社以外にも複数の金融会社から融資を受けさせていたそうです。
全部で10億円前後(他の報道によれば15億円)の売上の話なので、東レにとっては重要性がないのでしょうが、あやしい取引ではあります。
当サイトへのコメントで教えていただいたプレスリリース。フォーサイトの記事の中でも引用されています。
↓
当社元従業員による不正行為について(東レ)
「本件は、当社の元従業員が、水処理システム装置の海外向け販売において、当社とは直接取引関係のない第三者に対して、当社の買戻義務や連帯保証義務を定めた書類を無断で作成し、それを交付したものです。
この元従業員は2018年11月22日付で懲戒解雇処分といたしましたが、その後も、当社従業員であるかのようにふるまい、不正行為を継続していることを確認しております。」
同じ事件の別報道。
↓
弁護士法違反の疑い 秋元環境副大臣が東レ社長に「1.2億円借金取立て」(文春オンライン)
「「2016年、東レがバングラデシュで受注した総額約15億円の水処理装置の販売事業が、テロ事件による治安の悪化などで頓挫。すでに水処理装置の製造が進んでおり、決算上の問題で大量の在庫をどう処理するかが喫緊の課題となった」(社会部記者)
不正取引は、この在庫を、東レと取引のある代理店がいったん買い取った後、都内のコンサル会社「O」が引き取るというスキームで行われることになった。一昨年の秋以降、O社は総額5億6000万円で在庫を買い取るが、そこで問題が起きる。
「資金調達が難航し、結局、O社に買い取り資金を出すことになった会社の一つが、L社でした。O社はL社から2億4000万円の融資を受けたものの、貸借期間は2カ月で、月利は10%という法外な条件でした」(O社の関係者)
実は、L社は貸金業の登録もなく、法定金利を遥かに超える高利で貸付を行なういわば“ヤミ金業者”だった。O社は、昨年7月27日、2億4000万円の借金のうち、1億2000万円を返済。さらに、残金を返済に向けて、動いていた最中に登場したのが、衆院議員で当時国交副大臣の秋元氏だった。
8月9日、秋元副大臣はL社の“代理”として、東レに対し、借金を返済するよう求めたのだ。秋元氏が電話をかけた相手は、東レの日覺社長だった。」
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