会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

シティ9億ドル誤送金、失態の裏に「承認プロセス」-担当者証言(ブルームバーグより)

シティ9億ドル誤送金、失態の裏に「承認プロセス」-担当者証言

米銀行大手シティバンクの9億ドル誤送金問題の裁判の記事。

シティバンクは誤送金先に返金を求めて訴訟を起こしていますが、その中で送金ミスに関する詳しいことが出てきたそうです。

「誤送金した9億ドル(約939億円)のうち資産運用会社から戻らない5億ドル余りの回収を目指す訴訟の手続きが、マンハッタンのニューヨーク州南部地区連邦地裁で今週始まり、担当者の証言から大失態の詳細が明らかになった。

失敗の背景の中心には「シックスアイズ」承認プロセスと呼ばれる銀行内部のシステムがあった。6つの目を意味するシックスアイズのプロトコル(手続き)では、電信送金の点検と実行の過程で、3人の担当者の関与が義務付けられている。

「メーカー」役の担当者がシティの「フレックスキューブ」融資処理プログラムに支払い情報を手作業で入力する最初のステップは、テクノロジー企業ウィプロにほぼ依存する。メーカーの仕事を「チェッカー」が点検する2番目のステップにも通常ウィプロのスタッフが関与する。

シティのスタッフチームは、3番目のステップで支払いの最終チェックを行う「アプルーバー」の役割を果たす。レブロンに関係する誤送金のアプルーバーは、シティのグローバル融資オペレーショングループのシニアマネジャー、ビニー・フラッタ氏だった。

フラッタ氏が裁判所に提出した申告書によれば、フレックスキューブシステムを通じて1日に数百件の電信取引の処理が可能で、メーカー役の担当者がオプションを無効にしない限り、電信送金の実行がデフォルトモードとなっている。レブロン関連の支払いの一部はボックスにチェックマークが入っていたが、全てに入っていたわけではなかった。」

3人の担当者がチェックするから「シックスアイズ」なわけですが、最初の2人は外注先で、シティの最後の承認者は、チェックしなかったのに、送金するのがデフォルトになっていたので、送金が実行されてしまったということなのでしょうか。結局、外注先でミスをしてしまったら、ノーチェックになっていたようです。

ミスをした担当者は、実名が報じられてしまい、気の毒です。

ウォール街も注目、シティ9億ドル誤送金した当事者が裁判で今週証言(ブルームバーグ)

「アロキア・ラージ氏が問題を起こしたと知ったのは、ニューヨーク市場の通常取引がちょうど始まったばかりの時間帯だった。

シティグループ傘下のシティバンクは、米化粧品メーカー、レブロン向けの融資に関係する事務を代行しており、ラージ氏は、債権者グループへの定期的な利払いのチェックをシティのリテール部門からインドで請け負っていた。しかし、残りの元本全額を債権者の一部に誤って送金したことに同氏は突然気付いた。

ラージ氏の監督責任者は、北米融資業務トップに対し、「悪いニュースです」と8月12日にチャットで報告した。実際のところ9億ドル(約940億円)相当の悪いニュースだった。」

ミスをした方が悪いのでしょうが、誤送金されて返さないというのもどうかしています。

裁判はシティが100%勝てるということでもないそうです。学者のコメント。

「コロンビア大学ロースクールのエリック・タリー教授(会社法)は、シティバンクには「かなり確固たる言い分があるが、少しのリスクもないとそれほどはっきりしているわけではない」と述べ、受け取る権利がある金を受け取ったという債権者側の論点に左右される可能性が高いとの見解を示した。

タリー教授はその上で、債権者側が勝利すれば、内部統制の不備のために犯した過失を裁判所に救済させることはできないことを意味し、大手商業銀行への警告になる可能性があると指摘した。」
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