会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

グッドスピード、納車前に売り上げ先行計上 約5000件(日経より)

グッドスピード、納車前に売り上げ先行計上 約5000件(記事冒頭のみ)

グッドスピード(東証グロース)が売上先行計上を何年度にもわたって行っていたという記事。

第三者調査委員会の調査報告書を公表したそうです。

公表により、株価は上がったそうです。

グッドスピードが大幅反発、第三者委の調査報告書を受領(会社四季報オンライン)

「本日午前8時30分に第三者委員会の調査報告書を受領したと発表し、悪材料出尽くしの格好となった。」

「調査の結果、実際には納車が終わっていないにもかかわらず、長期間、広範囲にわたり売り上げを先行計上していたことが判明したという。」

会社のプレスリリース(2024年1月4日)。

第三者調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(PDFファイル)

不正会計が行われていた全期間ではなく、2021年9月期以降を訂正するとのことです。

「当社は 2019 年4月 25 日に東証マザーズ(当時)へ新規上場しており、当調査において売上の先行計上は、新規上場日以前の 2018 年9月期より発生しておりますが、①通期決算の影響額(売上高・売上原価・売上高総利益)は 2021 年9月期より増加していること、②四半期決算の影響額では 2020 年9月期以前でも億単位の影響額が見られるものの、四半期決算の縦覧期間は3年であり(2020 年9月期第3四半期決算は2023 年8月 13 日に法定公衆縦覧期間を満了)、2020 年9月期以前の訂正額は通期の影響額で判断することが妥当と考えられることを踏まえ、過年度決算の訂正は、2021 年9月期第1四半期決算から訂正を行う方針で進める旨、会計監査人の合意を得ております。以上のことから、2021 年9月期第1四半期以降の有価証券報告書および四半期報告書を訂正対象とし、訂正を行わない期に係る影響額は、2021 年9月期期首残高において影響額を反映する予定であります。今後、本件事案に係る税務等を考慮した最終的な会計処理を算定の上、過年度決算の訂正対象および各期間の影響額を確定してまいります。」

80ページほどの調査報告書公表版がついています(部分的にしかみていません)。

いくつかの隠語が登場します(報告書「略語一覧」より)。

納車テイ 「実際には納車未了にもかかわらず、納車した旨の社内処理を行い、売上計上すること、又はそのような処理を行った車両(嘘納車、テイ納車等も同義)。」

登録テイ 「納車テイのうち、顧客からの車両代金の入金及び登録(名義変更等)まで終了した段階で納車した旨の社内処理を行い、売上計上すること、又はそのような処理を行った車両(名変テイも同義)」

入金テイ 「納車テイのうち、顧客から車両代金の入金を受けた後、登録(名義変更等)未了の段階で納車した旨の社内処理を行い、売上計上すること、又はそのような処理を行った車両」

中古自動車販売会社の売上ですから、顧客の名義で登録してから、納車するという流れでしょう。入金のタイミングは販売条件によるのでしょうが、たぶん、入金→登録→納車、が原則的だと思われます。(調査報告書には詳しく書いてあると思います。)

納車(引き渡し)するところまでが、会社の義務ですから、納車が本来の売上計上のタイミングなのでしょう。

それより早く売上を計上したら、不正会計ということになります。よくありそうなパターンですが、こういうスピード違反はいけません。

報告書によると、金融庁の通報窓口に通報があり、それが監査法人に連絡され、調査が始まったそうです。

「2023 年 8 月 31 日、金融庁から、GS 社の会計監査人である A&A に対して連絡があり、金融庁の公益通報窓口に「GS 社が売上の先行計上の不正を行っている。」という通報があったことが伝えられた。これを受け、同年 9 月 12 日に金融庁と A&A との間でオンラインミーティングが設定され、金融庁から A&A に通報内容の詳細が共有された。 」(報告書1ページ)

その際の疑義の内容。

「① 未登録、未入金、未納車の車両について売上計上をしており、エビデンスを確認するはずの経理部もそれを知っているのではないか。
② 決算月に関しては、棚卸の前日に賃貸借契約を締結せずに駐車場を借り対象車両を移動している。 」(報告書1ページ)

②は、監査人による棚卸立会をごまかすためでしょう。

金融庁から言われた以上、きちんと調べないわけにはいきません(大変な費用がかかったと思われますが)。

調査において売上先行計上だと判断した方法は...

「車両販売取引においては、通常顧客からの車両代金の入金後、車両の整備、名義変更又は新車登録、並びに各種保険の加入手続を行った後で顧客に車両が納車される。納車テイによる売上の先行計上が行われた場合であっても、入金日、整備完了日、名義変更日又は新車登録日等が実際の納車日より後の日付となることは原則としてない。

このため、本調査においては、調査対象取引について入金日社内整備の完了日(基本的に自社で整備を行っていない CH 社の売上を除く)、車検証の名義変更日又は新車登録日(車検証が保管されていない取引等については保険開始日)等の確認を行い、これらの日付が売上計上の翌月以降だった取引は原則として売上の先行計上として認定した。」(報告書57ページ)

このほか、顧客に対して販売車両及び納車日等の消極的確認を行って、実際の納車日を確かめています。また、決算期末または四半期末をまたいで売上の取消しが行われた取引を、原則として売上の先行計上として追加しています(報告書57~58ページ)。

調査の結果、判明した売上の先行計上の件数及び金額は...

(報告書58~59ページ)

影響額は...

(報告書60ページ)

上場した期(2019年9月期)の翌期(2020年9月期)から、ひどくなっています。2021年9月期はさらにひどくなり、2022年9月期で少し先行売り上げ分を解消したかと思えば、直近の2023年9月期はまた増加しています。

(2023年9月期は別として、新型コロナの影響があった?)

毎期毎期数百台も先行売り上げをしているというのは、組織的と言わざるを得ません。

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