30年ぶりの税制抜本改革でビジネス環境は激変する
米トランプ政権の税制改革について米国EYの専門家(日本人)に聞いたインタビュー記事。トランプ大統領についてはともかく、税制改革に関する共和党の案は合理的だと考えているようです。
オバマ政権については...
「秦:オバマ氏は人格的にとても立派な方だと思いますし、私も尊敬しています。金融危機の最中に大統領になり、米経済の崩壊を防いだ功績は高く評価されるべきでしょう。一方でビジネス環境という面でみると、ここ8年は相次ぐ規制でかなり厳しい状況にありました。私が専門にしている税法の世界を見ても、FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act:外国口座税務コンプライアンス法)やインバージョン(税率の低い国への本社移転)規制、過小資本税制、組織再編の際のスピンオフ制限などの厳しい規制が次々と導入されました。金融全般を見れば、金融機関の説明責任と透明性の向上を狙ったドッド=フランク法(ウォール街改革及び消費者保護法)も挙げられます(取材後、トランプ大統領はドッド=フランク法によって強化された金融規制を見直す大統領令に署名)。」
「オバマ政権で導入された税法関連の規制には租税回避を防ぐという大義名分があり、それ自体を否定するものではありません。ただ、財務省などが出す規制を見ると、議会によって法律で各省庁に委譲されている権限を逸脱していると思われるものも多かったように思います。また、一つひとつの規制のボリュームが大きく、企業にとって大きな負荷になっていました。過小資本税制の最終規則を一つとっても518ページに上る大作で、これを企業が理解し、順守するのは並大抵のことではありません。正直なところ、オバマ政権下での規制は過度だったと思います。」
税制改革の必要性について...
「なぜ抜本的な税制改革が必要なのでしょうか。
秦:法人税に特化してお話ししますが、理由は2つ、法人税が世界一高く、ワールドワイド課税(企業が海外で稼いだ利益を配当で自国内に戻す際に、その配当に対して法人税を課す税制)のままだからです。」
「今回の共和党案では、法人税率の引き下げとともにワールドワイド課税の見直しに言及しています。オバマ政権はインバージョンを防ぐため新たに多くの規制を導入しましたが、グローバル企業がインバージョンやアーニング・ストリッピングを活用するのは米国の競争条件が各国と比べて著しく劣るため。その根本的な問題を解決せずに規制を強化しても、別の抜け穴を見つけようとするだけでしょう。トランプ大統領は米国第一主義を唱えていますが、税制に限って言えば、国際競争を阻害している要因を取り除くという性質のもので、世界標準に米国の競争環境を戻すという感覚だと思います。」
「国境税調整」という仕組みが共和党案には盛り込まれているそうですが、記事の後半では、それについて解説しています。
「共和党案には「メキシコ国境の壁」の原資とも言われる、国境税調整も含まれています。
秦:今回、話題になっている国境税調整は税制改革における大きな柱の一つです。簡単に言うと、米企業が輸出する場合は輸出売り上げを課税ベースから控除する一方で、原材料などを輸入した場合は輸入仕入高を経費として認めないという考え方です。法人税率が20%だとした場合、輸出高の20%を補助金として受け取り、輸入高の20%を関税として支払うのと似たような効果が得られるため、米国内に生産拠点を戻すインセンティブが働きます。...
なぜこういうアイデアが出てきたのかというと、米国には消費税や付加価値税(VAT)などの間接税がないという事情があります。」
詳しくは、日経ビジネス記事をご覧ください。
当サイトの関連記事(国境税と付加価値税(日本の消費税など)の関係についてふれています。)
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