長野県の建設会社「ヤマウラ」(東証プライム)の東京の子会社で、25億円に上る不適切支出が発覚したという記事。
「東京証券取引所で最上位のプライム市場に上場している駒ヶ根市の建設会社、「ヤマウラ」では、東京で不動産販売を行う子会社の「ヤマウラ企画開発」で昨年度、およそ3億3400万円の不適切な支出があったことが、先月、明らかになりました。(当サイトの関連記事(5月の適時開示について))
会社によりますと、2020年4月からことし3月までを調べたところ不適切な支出は、これまでにわかっている3億3400万円を含む25億円に上る見込みであることがわかったということです。
これまでの調査では、子会社の会計業務を担う社員の関与が明らかになっていて、支出された金は、この社員の子どもが経営する会社と子ども名義の個人口座、さらに取り引きなどがない2つの会社に送金されていたということです。」
すごい金額の子ども手当です。
社内調査及び第三者委員会による調査の進捗状況に関するお知らせ(2023年6月22日)(ヤマウラ)
監査人がまず異常を見つけたようです。社員の言い分のままに、決算発表まで行ってしまったのは、まずかったものの、監査の追加手続がきっかけで、不正が明らかになりました。
「2023 年 5 月 9 日に監査人が、当社の 100%子会社であるヤマウラ企画開発株式会社の元帳の預金残高と銀行の預金残高に 10 億円の開きがあることを発見し、10 日に当社の担当取締役にその事実を伝 えました。12 日に当社の経理責任者で当該子会社の経理を担当する社員が、帳簿との差異 10 億円は 未収入金であったとして決算短信を修正して会社へ提出し、決算短信を校了しています。
当該社員は 30 年近く経理の責任者として業務を行い、それまでの実績からも本人に対する信頼もあ り、修正した決算短信を受領した担当取締役は、証憑類の確認をすることなく単純な仕訳ミスや思い 違い等のことと考え、5 月 15 日に取締役会での承認を経て決算発表を行っております。
しかしながら、決算短信では未収入金で 10 億円を処理したものの、その後も監査が続く中で証票類 がなかったため一度確認をしようと、5 月 22 日に未収入金の相手会社に直接会って確認をしたとこ ろ、未収入金には今回の 10 億円は存在しないことがわかりました。
これにより、2023 年 3 月期について社内調査をするチームを組み、まずは本件の実態を把握すべく 勘定元帳と預金口座の動きを調べることや、当該社員から事情を聴きとるなどの調査を開始しました。
2023 年 5 月 23 日には、当該社員により預金通帳や振込依頼書(送金票)の控えが隠ぺいされていた ため、金融機関から不明な支出と思われる支出についての送金票の一部を入手したことにより、その 中に当該子会社とは取引があり得ない会社があり、その会社の登記簿を確認したところ、当該社員の 子が代表を務める会社であることを特定しました。この時点で、入手していた金融機関からの送金票 から当該会社への不適切な支出が 2022 年 4 月~12 月の期間に 3.34 億円 あることを確認するに至りま した。
5 月 26 日には臨時取締役会を開催し、当該社員が不適切な支出をした 3.34 億円、及び可能性のある 金額の総額が 10 億円に上る不祥事が発覚した経過とその後の調査による現状の説明、今後は第三者委 員会を設置して調査を行うことの説明をして、当日適時開示をしています。
5 月 30 日にも臨時取締役会を開催し、本件に対する第三者委員会を設置し、下記の調査目的、調査 期間、調査対象、調査方法による調査を実施すること、及びこれに掛かる期間が相当程度必要なため、 6 月 23 日の株主総会においては連結計算書類等の報告事項を報告できない見込みであることから、 継続会を実施することを決議し、当日適時開示をしています。」
現時点でわかっている不正に内容と規模は...
「(2)本件の不適切な支出に関わる内容及び規模
内容:当該社員が当社経理責任者として勤務をしていましたが、子会社の経理担当を兼務しており、現在は一人で担当しておりました。子会社は東京事務所で主に分譲マンションの開発・販売の営業をしており、その支払いに関しては、東京の責任者(子会社の取締役で、当社東京支店⾧で首都圏事業部⾧を務める者)が決裁をして取りまとめた検収書や請求書等の証票類に基づく伝票を当社に送り、それらを基に当社の当該社員が支払いをしておりましたが、本件については、支払い指示がないにもかかわらず当該社員が一人で送金伝票を起票し、子会社の銀行口座から振込支出を行なっていたもの
です。
規模:当初、2023 年 3 月期での銀行預金残高と帳簿残高の差異が 10 億円であり、5 月 26 日時点で明確に不適正支出と判明された金額は 3.34 億円でした。しかし、その後の調査では、2021 年 3 月期まで遡っての不適切支出の行為があったことが判明しており、さらに 2020 年 3 月期についても不適切であると疑義がある支出があることから 2019 年 3 月期まで遡り、元帳と銀行口座の入出金データの照合を基に引き続き調査を進めています。2021 年 3 月期から 2023 年 3 月期について銀行より取り寄せた不適切な支出先への振込票の合計額は 25 億円であることが判明することとなりましたが、その他の疑義のある支出についても振込票等の証票類の入手、確認作業を進めてまいります。現在、不適切な支出先としては、当該社員の子の経営する会社と当該社員の子名義の個人口座、及び他の当該子会社と取引関係の全くない会社 2 社が判明しております。 」
ということで、そもそも、親会社の経理責任者が、子会社の経理も兼務していたというのは、内部牽制が効かない状況だったのでしょう。定められていた業務フロー(子会社責任者が決裁後に支払い)と異なる支払い方法をとっていたのも問題でしょう(問題視されなかったのはモニタリングの不備?)。また、25億円も、2021年3月期までしか遡って調べていない金額なので、それ以前の期を調べるともっと膨らむ可能性もありそうです。
財務報告への影響は...
「不適切な支出を隠すため、その支出に係る会計処理において不適切な売上原価計上、及び不適切な貸借対照表の資産勘定科目への組替計上など不適切で複雑な会計処理が行われていることを一部確認しています。」
「本件の事実関係の解明を急ぎ、ここで明らかとなった事実に基づき 2023 年 3 月期及び過年度の決算発表の訂正発表を行う見込み」とのことですが、30年もの経験があるベテラン経理マンによる何年にも渡る不正を解きほぐすのは、ある程度時間がかかりそうです。
ヤマウラ子会社で25億円の不適切支出 経理担当が自分の子が経営の会社などに送金 #FNNプライムオンライン #長野放送 https://t.co/3zOfBkskHB
— FNNプライムオンライン (@FNN_News) June 23, 2023