改善状況報告書(PDFファイル)
日産自動車は、改善状況報告書を、2020年1月16日に東証に提出しました。
昨年6月に改善報告書を提出していますが、6か月経過したことから、当該報告書に記載された改善措置の実施状況及び運用状況を記載した改善状況報告書を提出したものです。
おおむね、調査の体制及び範囲(3~6ページ)、本事案の内容及び関係者の関与状況(6~10ページ)、改善措置(10ページ~)という内容になっています。
調査体制については、当初は、内部通報を受けた監査役主導だったこと、レイサムアンドワトキンス外国法共同事業法律事務所(同事務所は、過去に日産に対して日産の法務案件に関するアドバイスを行っていたそうです)等に依頼したこと、代表取締役社長(当時)である西川廣人氏より直接指示を受けて調査したこと、グローバルコンプライアンスオフィサー(当時)が主導・監督したことなどを明らかにしています。「内部調査の独立性には問題ない」といっていますが、まったく信用できません。
事案の内容(たった5ページだけです)について、ゴーン氏の起訴事実に関係していそうな記述を引用すると...
「ゴーン氏に対する取締役報酬及び退職後の金銭支払いの検討」
「日産の取締役会決議により、ゴーン氏に対し、自身の報酬の決定も含む、取締役及びトップラインマネジメント(副社長、専務執行役員、常務執行役員及び理事を含む。)の報酬を決定する権限が一任されていました。」
「個々の取締役及びトップラインマネジメントの報酬額については、ゴーン氏が実質的にすべて一人で決定していました。ゴーン氏が決定した個々の報酬の支払いは秘書室が担当しており、秘書室から他部署に個々の取締役及びトップラインマネジメントの報酬額に関する情報が出ることはありませんでした。」
「ゴーン氏は、開示される自らの取締役報酬の金額を減らすため、自らに付与した取締役報酬の一部(以下「繰延報酬」という。)について支払時期を退任後に繰り延べるなどしてその開示をせず、その結果、2010 年 3 月期から 2018 年 3 月期におけるゴーン氏の報酬総額は過少に開示されてきました。」
「2010年 3月期以降、繰延報酬について、ケリー氏をはじめとする特定少数の者の間で、開示せずに支払う方法について様々な検討が行われました。退職後の報酬についても、繰延報酬相当額の支払方法の一つとして、又は退職後における別個の報酬として、支払うことが検討されました。上記検討に際して作成された書面も残されており、ゴーン氏の署名が付されたものもあります。」
「退職後の処遇に関して、ゴーン氏は、グローバル人事及び法務の責任者であるケリー氏を通じて、西川 CEO(当時)の署名が付された書面を取得しました。」
ゴーン氏に権限が一任されていたといっても、株主総会で承認された範囲でしか決定権限はないはずです。株主総会では、退職後に支払う報酬のことまで承認されていたのでしょうか。この報告書では、株主総会決議との関係についてまったくふれていません。また、「開示せずに支払う方法について様々な検討」とのことです。どういう支払い方法かすら検討中である(ということは決まっていない?)のに、「確定」したといえるのでしょうか。
「ゴーン氏による会社資金・経費の私的利用」
「ゴーン氏は、秘書室長(当時)を関与させて株式会社新生銀行との為替スワップ取引を日産に付け替え、日産には実損が発生しましたが、ゴーン氏から実損分が日産に支払われました。取締役会には、上記取引の内容は開示されませんでした。」
ゴーン氏から実損分が支払われたのであれば、実損とはいえないのでは。また、ゴーン氏側の言い分だと、日産に付け替えるときに、取締役会の承認を受けているのでは。
「CEO リザーブを利用した支出」
「ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、CEO リザーブを使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計 1,470 万米ドルの支払いを行わせました。また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該販売代理店に対し、CEO リザーブを使用して、販売奨励金名目で合計3,200 万米ドルの支払いを行わせました。」
実質的には、これが一番大きな疑惑です。しかし、1,470 万米ドルや3,200 万米ドルの支払いと、支払い先からゴーン氏側への資金提供(裏リベート?貸付?投資?)との関係は明らかになっているのでしょうか。
日産:顧問や相談役を廃止へ、企業統治改革の一環でー関係者(ブルームバーグ)
「事情に詳しい関係者1人が明らかにしたところによると、日産は相談役と顧問の肩書を廃止する方向で検討しており、今月中にも東京証券取引所に提出する不正問題の再発防止策や改善策などをまとめた報告書の中で明記するという。
現在、日産の専属での相談役・顧問は小枝至名誉顧問と川口均特別顧問の2人いるが、役職廃止と同時に退任することになる。昨年9月に退任した西川広人前社長兼最高経営責任者(CEO)も2月18日開催の臨時株主総会で取締役を退任する方向で、その後は日産を去る可能性が高い。」
日産、顧問・相談役廃止を決定 東証に改善報告書(時事)
「報告書には顧問や相談役の原則廃止を決めたと明記。ゴーン被告に権限が集中した反省を踏まえ、経営の透明性を高める。」
「2月の臨時株主総会で取締役を退く予定の西川広人前社長兼最高経営責任者(CEO)ら旧経営陣は、今回の決定で経営に影響を及ぼすことが事実上不可能となる。報告書はゴーン被告による取締役報酬約123億円の過少開示などを不正事例として列挙。関係者のうち部長級以上の3人を社内処分し、追加処分の検討も明らかにした。」
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