クリプトンの社長はエンジニア出身。
スピーカーボックスは密閉式に拘っている。
そのルーツはAR(アコースティックリサーチ)社 AR-3aにあるようです。
アコースティックサスペンション式のスピーカーボックスは比較的小型のボックスに吸音材を一杯に詰めて、スピーカーユニットの背面から出る音を積極的に吸収し、擬似的に大型スピーカーに入れたかのような動作をさせています。低音域がカットされない。
スピーカーユニットの振動板の動きは必然的にボックスの内部気圧を上下させる。
内部気圧と外気圧(大気圧)は等しくなるような物理力が働く。これは振動板の動きを抑えることに他ならない。
小型ボックス内の空気量は大型ボックスと比べ少ないので内部気圧の変化が大きい。つまり、より振動板の動きの抑制力が強い。
この抑制力は振幅の大きい低域ほどその影響は大きいと考えられる。
スピーカーユニットが複数ある場合、中高域ユニット(コーン型、ドーム型等)は背面圧を受ける。本来の信号以外の振幅が加わることになる。好ましいものではない。
これを防ぐため、ボックス内にインナーボックスを設けて完全分離するか。隔壁を設けたり、吸音材で覆い防ぐことになる。
アコースティックサスペンション式のスピーカーユニットは振幅が抑えられる。結果として、スピーカーシステムの能率は下がることになる。
管球アンプ(半導体アンプに比して低出力)にとって使いにくいスピーカーと言えます。
15年ほど前、松本市の古い街並みをブラブラ歩きしていた。
土産物屋からバックグランドミュージックが流れていた。
美しい音色に惹かれて入った。
AR-3aだった。懐かしさもあり、暫く、聞き惚れました。
○バスレフ型スピーカー
バスレフ箱は吸音材は少なめなので、密閉箱と比べて、ボックスの内容積は同じでも実質的な内容積は大きい。加えて、バスレフポートは空気抜き穴でもある。内部気圧の変化は少ない。
エアーサスペンション効果はほとんどないと考えられます。
バスレフ方式のスピーカーは、スピーカーユニットの背面から出る音を位相を180度を変えて、つまり、前面から出る音と同位相して合成し、特定の低域の音量を増強する。
位相が同じなら増強されるけれど、異なれば打ち消され減衰する。超低域部分は位相がずれるので減ることになる。
つまり、低域の量感は増すけれど、低域は下に伸びているのではなく、むしろ、超低域はカットされる。
だから、バスレフ方式が良くないと言うことでもない。
そもそも超低域50hz以下を出す楽器はほぼないので、カットすると言う考えがあって良い。
無理矢理持ち上げないのでアンプへの負荷は減る。
小出力管球式アンプに向いている。
バスレフポートは固有の振動数を持つ共鳴管である。
本来、音楽に含まれていない付帯音で低音が伸びているように感じることもある。
昔、音楽には全く含まれていない低域の付帯音を発生させる製品があった。如何にも生々しく聞こえた。
生音とオーディオ再生音は全く違う。如何にも生音らしく聴こえるように工夫を凝らすのがオーディオ。
それがオーディオの大前提なので全否定するつもりはありません。
オーディオは雰囲気が最重要。美しい装置からは美しい音が出るのです。
自分のところはそうではないので、部屋は暗くして、灯りでボカして聴いています。
スピーカーユニットの低域を伸ばすためにはF0を下げる。スピーカーユニットの振動板を重くすれば下がる。
当然ながら能率は下がる。
一度動き出したスピーカーの振動板は信号が途絶えても、慣性の法則でゆらゆらと動き続け、直ぐには止まらない。重い振動板ほどその傾向が強い。
小型スピーカーユニットで低域を無理やり伸ばそうとして振幅を増やしても、空振りするだけで音にはならない。
空振りの悪いところはその上にある再生音域帯域を濁すことです。空振りは避けたい。
アコースティックサスペンショ方式では機械的に抑える効果が期待できる。
○密閉小型スピーカー
低域がダラ下がりになる。
低域をアンプのトーンコントロール装置で低域ブーストすると言う考えもあります。
ところが、トーンコントロール装置は余計な回路を付けると音の劣化を招くのでピュアオーディ装置には相応しくないと削られてしまった。
超低域をブーストすれば良いのですが、そのためには大出力のパワーアンプが必要。アンプの出力を上げれば、大型アンプが必要になる。
トーンコントロール回路による音質劣化の欠点を論うより、スピーカー特性、再生環境(部屋)を調整できると言う利点にもっと目を向けるべきと思う。
管球式プリアンプ、マランツ7、マッキントッシュC22にはトーンコントロール装置が付いています。当時は付いていなければならない必須の便利機能でした。
便利機能が手番し難いのが永遠の名機の所以かもしれません。