図書館・語り・紙芝居・集団相手の絵本よみ・ボランティアなどについて書きます。
絵解きボランティア
『語る人の質問に答えて』を読む
最近の研究書のリストを見て、『語る人の質問に答えて』松岡享子/著(東京子ども図書館)をもう一度借り出してみました。昔読んだ時は、とても共感したのです。いくつか、気になった所を書いてみます。
★まず、「質問に答える」というスタンス。
これについて
スタンスそのものに見直しが必要ではないかと思います。紙芝居でも まついのりこさんが書いていましたが、特定の指導者のいいなりになってしまうという危惧を、指導者自らが持っている必要があるのではないか。質問の趣旨から、現場の人がどのように考えるか推測し、それに見合う方向を照らす、というスタンスはどうでしょうか。
絵本の会でも、誰か絵本に詳しい人が常に「自分の趣味に合った本」を先回りして紹介して、周囲の歓心を買い、カリスマになっていく様子があります。権威化の問題点を知っていれば、まず自制しそれを控えるというのが民主化への道のりだと思う。自分がバカに見えるみたいだけど、それが我慢できるかどうか。子育ての時、子どもの知識の足取りに合わせて「ふーん、ママ知らなかったよ、すごいね」と子ども発見を喜んだことを思い出して欲しい。
★「日常的な言葉で語ると、日常的レベルと違う想像上の世界に連れていくことが難しい」というふうに説明がされています。
これについて。
「図書館のおはなし会はかしこまって聞かなくてはならない、息がつまりそうだ」「どうしてこうも真面目一方の態度なのか」とよく言われる原因がここにあるんじゃないかと思いました。 「修業みたいでごめんね」と心の中で子どもに謝りながら語るボランティアもいます。
図書館の語りの時間は、子どもは逃げていき、大人(自分たちもやっている)ばかり、という状況ではないかと思います。それで成功したと喜んでいる場合じゃないと思う。
仲間内だけに郵送される「大人向けおはなし会」の案内や、特定の人だけにファックスで送られる子どもの本の勉強会の案内。とにかく、風通しが悪すぎると思うのは私だけでしょうか。そういう案内を受け取って、みんなは 不愉快なのか自分だけ特別だわと嬉しいのか、よくわかりません。そういう閉鎖的な所が土台になって、ストーリーテリングの現場が浮世離れしていき、真面目一方感を増幅させます。発信する側の「民度」が試されると思うよ。
修業に集中するために、日常を離れて特別なスタイルに執着するというのは、別の面から見ると、現実問題から目をそらすという悪い面もあります。
子どもも語りたくなるような日常のレベルにすることで、次の世代に手渡されていくというのが私の考えです。「~~だと」というような伝聞形式は、日常のレベルだと思うけど。 巻図書館のオープニング事業で、博物館の館長が「間違えてもだーれも分かんね」とみんなを笑わせてから、語りをやりました。大勢の子どもたちも「うんざり感」なく聞いていました。その雰囲気を、私たちが持てるようになるといいと思う。
★「ももたろう」の語りで、「柴かり」が間違ってとらえられても想像のきっかけになるのだという説明。
これについて。
その通りだと思います。いろんな想像のきっかけになる。で、ポイントは、いい悪いではなく「そういう問題もあるかな」という提起がされているということです。「直したい人はそのように、直したくない人はそのように」という、一パターンに収束させないという、民衆の知恵を大切にしたらどうかという提起でもあると思います。提起することは大事。どんな組織でも、異論を言える状態にするということは大事です。こういうときにヒステリックに「おだまりなさい!」などとやってしまうおばさんがいます。「質問に答えて」というスタンスに立っていると、つい怒鳴りたくなるでしょうね。「良い本を教えてやろう」という気分でねこなで声で話す人も、裏ではそうなりやすい。
★全編を通して
語りは学校でやるしかない、あるいは特別なきちんとした場所でやるしかない、と、そういう前提で書かれているように思える。。学校で、聞いてくれる状態に子どもを揃えて置いて、時間を決めて、途中で出入りのない状態で、すべて考えるという視点です。読書って内省的な時間だものね。
図書館のおはなし会はこれとは違うスタンスで試していくことが必要だと思う。そして、それを学校という教育の場所に広げていくこと。そのためには「子どもの文化」を取り入れる感覚が必要です。休日の遊び半分の気持ちでも、また、落ち着きのない子どもでも安心して付き合えるようなスタイルを、自ら模索していく必要があると思います。失敗もあるだろうけど、それを承知でやらなくちゃならない。
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