植物を育てています

盆栽の手入れをしながら感じたことをお話ししようと思います

なつかしい 思い出

2020-09-26 12:22:54 | Weblog
まだ、私が弟子だったころ 園で発行する小冊子のようなもの がありました。
園にお越しのお客様だけにお渡ししていました。
もう、40年以上前のお話に なってしまいました。

昔の盆栽村は 平日でもたくさんのお客様でにぎわっていましたが、
週末ともなれば 門を開けるのと同時にお客様がはいってくるほど。

絵葉書なども売っていました。
そんな時代に作られた 親方の文章です。



「カマキリ」
 ~~~秋の日に~~~

鈴虫が しきりに鳴いているのに 耳を傾けていたが、
いつのまにか 鳴き声もとだえ、うめもどきの赤い光った可愛い実が、
まるで宝石をちりばめた様な姿を呈している。
アケビの薄紫色の細長い のんびりした実、松類は夏の高温のために、緑がふかふかと充実して魅力を加え、
「秋深し」を庭中に漂わせ、本年の丹精を素直に表している。

ふと、庭の隅に目をやると、白い花を咲かせた つる草の上に、カマキリが静かに立っている。 
もう少しで卵を産むのだろうか。
夏のうち、盆栽の害虫を食べてくれて、大切な盆栽の管理に協力してくれたのだろうと思うと、本当にご苦労様と 声をかけたくなる。

子供の頃に、夏の にわか雨の水溜りで、カマキリの体内から出た線虫みたいなものが動いているのを不思議に思い 
いつまでも眺めていた事を思い出す。
来年もよろしくね とつぶやく。

1981年10月  加藤秀男(萌3号より)