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電気通信視察団の数奇な経験談 その4 シリア編

2014-02-05 17:15:48 | 投稿
電気通信視察団の数奇な経験談 その4 シリア編
関東電友会名誉顧問 桑原 守二

 電気通信視察団が平成11年に黒海の北部、クリミア半島の港町ヤルタを訪れたとき、山岸副団長が「この対岸はトルコですね」と言ったことから、12年の訪問国はトルコから始まることが決まった。視察団はさらにトルコの後、シリア、イスラエルなど、なかなか訪問し難い国々を回ることになったが、ここではシリアに重点を置いて述べてみたい。
 シリアの首都ダマスカスに着いた翌日、シリア・テレコム、シリア高等教育省、情報協会などを駆け足で訪問した後ホテルへ戻るバスの窓から、武装した兵隊がパラパラと道路に散開するのが見えた。何となく市街戦でも始まる雰囲気である。ときに平成12年6月10日のことであった。である。
 ホテルに戻るとアサド大統領が死去されたとのニュースが飛び込んだ。カンボジア訪問時は内紛が起こる一週間前であったが、シリアでは大変な出来事と正に遭遇した。大統領の後継問題でクーデタなどが起きるかもしれないのである。
 この日は視察団全員が大使公邸にご招待を頂いていた。こんな事態になっては如何かと思い大使に電話して伺うと、予定通り来なさいとのことあった。大使の声からは、動じている様子はほとんど感じられない。午後7時、視察団一行がバスで公邸に着くと、大使とともに大使夫人が正装して出迎え頂いた。ビュッヘスタイルの夕食の間、大使夫人はずっと世話をして下さり、大使も団員達と気さくに歓談を続けられた。外交官と直接話しをする機会など少ない団員には貴重な経験であったろう。
 そうした間にも、団長である筆者としては、もし戒厳令でも宣告されてイスラエルに向け出発できなくなったらと思うと、何となく気の晴れない夕べであった。後に聞いた話では、次男のバシャールが7月10日に信任を問う国民投票を実施し、7月17日に後継大統領に就任したという。ただし当時のバシャールの年齢は35歳で憲法に定める大統領資格条件を満足しておらず、急遽、憲法を改定しての就任であった。こうした強引さが今日の内紛の一因になっているのかもしれない。
 休日を利用してのパルミラ見学も忘れられぬ思い出である。世界遺産パルミラはダマスカスの北東230kmのところにあり、バスで行くしかない。砂漠の中の平坦で真っ直ぐな道をバスは邪魔するものもなく突っ走り、3時間足らずで着く。遺跡から1km程度しか離れてないホテルの窓からは、180度の角度に拡がった遺跡が眺められる。
 夜、ホテルのすぐ傍らに張られたテントの中で、羊の丸焼きを食べながらベドウィンの民族舞踊を楽しんだ。太鼓と笛の音楽に合わせてただ腰を振るだけの、あまり芸術的ではない踊りである。しかし日本を出てから初めてのアミューズメントに、若い団員は大いに盛り上がっていた。
 アルコールが入った宴の途中から、踊り子の腰紐に1ドル札が挟まった。席を回って行くうちに、札が2枚、3枚と増えていく。5枚も貯まると、1枚だけ見せ金を残して座長らしき男の前にあるザルに収め、また踊りながら回る。そのうちに、見せ金が5ドル札に変わった。
 ベドウィン劇団はパルミラの町から近いところに住居があって、団体客目当てに出稼ぎに来たらしかった。彼等にとって、この夜は年に何度もない稼ぎ時であっただろう。



大使夫人と歓談する桑原団長

腰ひもにドル紙幣を挟んで
踊るベドウィンの女性
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