片岡礼子 日記帳

女優:片岡礼子本人が送る日記。

『夢売るふたり』

2012年10月03日 | movie
封切りと同時に映画館へでかけてった。

見始めてすぐ、
そうだ、そうだった。
この監督。西川監督の映画は、
痛いんだった。
甘くないんだった・・・と
思い出した。
ふだん忘れているんだけど、
大事な何か…
ひっかかる。

その何かを充分に
思い出せぬまま、

主人公である夫婦のその仕事ぶりに目を奪われていた。

彼らは、小さな居酒屋を営んでいた。
仕事の帰りに、今日の疲れを置いてゆけるような、、
そこに通う人が、
いつかみた夢を少しだけ思いだせるよな。。。

ついつい寄り道するよなお店。

不意に

そこで起きた火事。

なにか、マグマのようなものがどろどろ出てくる予兆だったのか?
あの火事は。と今なら思う。

そんな思いもよらぬ事故から

一瞬で、
怖いほど孤立していく夫婦。

...
そこへ、これでもか、これでもか、
といわんばかりにチャンスの顔をした不運が押し寄せる。

なんだろう。
崖が迫るのが分かっていながら
走るスピードを落とすことのできない車に乗らされて身動き取れない悪夢を見ているような。。。

変な汗をかいた。

恐ろしい地底に引き込まれるのを止めることができない中で

貫也が、頑張るよと笑顔を向けたときのどこまでも、
けなげな里子。

恋に落ちていくときの
儚い夢を見るOL 咲月

........。紀代。ひとみ。
滝子。

リアルに知ってる女(ひと)
のような感覚で見てしまう。
容赦のない描写に
瞬きすら躊躇する。


そして、玲子を演じる砂羽。
彼女の役どころも、
儚くも身の程を知ってか多くを語らない。。
だが後に残る視線をくれてかえって気になる。気になるよ。

デビューから、知っているだけにお互いに出演作には、
改めて何かを言うことは、あまりしないのだが。

玲子は小憎いほどに、可愛い女だった。
脳裏に、この女性の香りの記憶が勝手に残るほど・・・
なのにさらっと
掴めないまま立ち去って行ってしまう。。


いつかの舞台、松尾スズキさん演出の「欲望という名の電車」を観たとき。のこと。。


ほんわか柔らかい、マシュマロのような甘い香りの女性の役ステラでありながら、
その夜の帰り道、さっき見た舞台を思い返すと、その女性ステラの活きる芯の強さだけが印象に強く残り それが迫ってきた。

こういう女性をほかに知らない。
なんだろう この感じは。
なんだろう。
とにかくひっかかる。


うまく言葉で表現できないけれど
独りで、もしくは今一緒に舞台を観た友人とだけ、お酒を飲みたい気分になった。

砂羽の顔を観たいけれど
この日は、どうしても
楽屋に寄れずに帰った。

ある意味最高に贅沢な気分でありながら。。。
意識を自分に向けないように気をつけた。


長い説明になってしまったが、
この感じでスクリーンに釘付けになりましたのです。

話は「夢売るふたり」にもどります。

実はチラシを持っていながら、タイトルを "夢見るふたり" と思い込んでいたワタシ。 ( 日常から抜け出し、そう思いたかったか? )

時間を作って、劇場に駆け込み
スクリーンにタイトルが出たとき思わず、自分の持っていたチラシが間違いでないか、暗い中で確認した。

「蛇イチゴ」を何度も何度もみた
あの頃の感覚。そしてその頃の自分へのジレンマ。
チラシのタイトルを確認しながら、それも同時に思い出す。ちっとも変わってないじゃないか。
何やってんだよ!片岡!!

あらら? こら、まて、
すべては自分のチョイス。

痛いなあ。。。
詐欺だったり、それが痛快なほど大胆な手口だったり、
でも、手を伸ばしたらそこにいるひとに、届かない気持ち、もどかしい想い。
切ないな。
切ないおとなの映画だな。

夫婦は、
不意にカタチを変えていく。
見えないカタチを変えていく。

永遠のように見えながら
もうそこにはいない
本当の姿カタチ。。

夢見るふたりでいたかったか。
ワタシ。

そんな映画で時間を忘れました。