青森行きは羽田から
北へ向かう人の群れは誰も無口で
YouTubeとか聞いている
私もひとり JALのボーイングに乗り
ANA派なのでマイル付かず 泣いていました
あゝ 津軽海峡冬景色
ここしばらく首都圏は酷暑が続き、休日になっても自転車に乗ろうという気力がなかなか起きません。
どうしたものか?
なら涼しい所に行けばいいんじゃね?
というわけで涼を求め、自転車を持って青森まで飛行機でやってきた俺ですこんにちわ。
去年も全く同じ発想で北海道に行きましたが、同じところに行ってもつまらないからと選んだのが本州最北の青森。
北に行けば涼しくなるんだろ、という単純極まる発想です。
青森までわざわざ来て、どこを走るのか。下北半島や八甲田山にも行ってみたかったのですが、今日は津軽半島一周ライドを選びました。季節外れの津軽海峡冬景色ごっこです。
距離はざっと200km、東京からの往復を考えると日帰りは無理があるので一泊二日で満喫していく所存です。
青森空港に降り立つと、意外と涼しくありません。
気温というより妙に湿度が高く、暑いというよりべたついて不快、というのが正直なところ。
しかし3時間前に羽田で輪行準備をしていた時は、朝6時台であるにもかかわらず汗が流れてくるほどの暑さに見舞われており、それに比べるとだいぶマシだと思いなおします。
自転車を組み終え、まずは空港からまっすぐ西に進み、五所川原市内を抜けて津軽半島の西側を走る広域農道「メロンロード」を北上します。
メロンロードはずーっとまっすぐに伸びており、そして周りにあるのは畑と風車。ここ津軽半島は日本海からの強い西風が吹き付けるので、風力発電用の風車がやたら多いです。
それに次いで多いのが沼。
この風車はデカいですね、畑のど真ん中にあるけど土地の権利とかどうなってるんでしょ。
そして沼。これもデカい・・・
畑、風車、沼・・・さっきからその三要素しかありません。ここは津軽半島の西岸のはず、なぜ海が見えない!?
その答えはGoogleMapを見ると出てきます。
この辺りの海岸は津軽屏風山砂丘地帯という砂丘になっていますが、江戸時代に津軽藩によって防風防砂のために松が植林されており、あんまり砂丘っぽくはありません。
しかしこの地形により海岸沿いに道路を通すことが難しく、そして水はけのよい砂丘を生かしてメロンやスイカの栽培が盛んになりました。メロンロードの名はこれに由来します。
青森県の果物というとリンゴのイメージですが、リンゴはもっと南の方で栽培しているそうです。この辺りは風が強いので、背の高い果樹は合わないのでしょうか。
メロンロードに入って20km。さすがに風車責めに飽きてきた頃、久々に信号に出会いました。
ここでいったん左折し、高山稲荷神社へ向かいます。
見てくださいこの鳥居と社務所。畑と風車しかないここになぜこんな立派なものが?何か悪いことでもしてるのか!?と勘繰りたくなるレベルです。
もちろん悪事を働いているわけではなく、ここは千本鳥居で有名な神社です。その観光で栄えているのでしょう。
しっかりバイクラックもあります。えらい。
自転車乗りにもこうやって気を使ってくれる辺り、客を呼べる観光地感があります。
目玉になっている千本鳥居はご覧の迫力。
ずいぶん色が鮮やかだなと思いよく見たら、大部分が令和になって改築されたものでした。かつては木製だったのですが、耐久性に優れる硬質塩化ビニール製になっているそうです。
ここ津軽半島ではあじさいが目につきます。ここでも鳥居とのコントラストが鮮やかでした。
いやはや、こんなところ(失礼)にここまで立派な神社があるとは思いませんでした。
千本鳥居で有名ということはもちろん知っていましたが、それ以外の見どころも多く予想外にいい所でした。嬉しい誤算です。
そして再び自転車に乗り北上を再開。しばらく走ると十三湖が見えてきました。
十三湖はかつて十三湊と呼ばれ、平安時代から海運の要衝として栄えていました。しかし江戸時代に鰺ヶ沢にその地位を奪われ衰退、今ではしじみの生産で全国二位の汽水湖となっています。(一位は島根の宍道湖)
そんな十三湖のほとりにあるのがしじみラーメン和歌山。・・・和歌山?なぜ青森県で和歌山?どういうことなの。
その疑問はさておき、しじみラーメンがやってきました。スープは白濁したしじみ出汁、具にもしじみがしっかり乗っかっています。
見た目通りのストレートなしじみ味で、美味しく完食いたしました。最近のラーメンはこってりしているものが多いですけど、俺はこういうアッサリ系の方が好きなんですよね。齢のせいかもしれませんが。
お店を出て、十三湖大橋を渡ると日本海と湖が混じります。ここまできてようやく海をまともに見ることができました。半島一周ライドとは思えんな。
そして正面には小泊半島。
十三湖の少し先でメロンロードは終わり、ここから国道339号線をさらに北進していきます。
メロンロードは平坦かつカーブの少ない道でしたが、国道339号になると海沿いのカーブの多い道に変わります。
特に小泊から龍飛までの間は竜泊ラインと呼ばれ、本州の最果てに来ている秘境感にあふれた道路です。
この竜泊ラインは開通が1984年と比較的新しい道路です。それ以前の小泊~龍飛崎間は道路が無く、断崖絶壁が続く文字通りの秘境でした。
しかし青函トンネルの工事が本格化した1972年、トンネル工事の資材運搬とその後の観光道路化を見据えて建設に着手し、12年の歳月をかけて完成したのがこの竜泊ラインです。
七ツ滝を過ぎると山塊が眼前に迫ってきました。これが竜泊ライン唯一のヒルクライムコース。標高は500mに満たないのですが、走ってみると意外と手ごわいルートです。
その理由がこれ。ここは斜度の変化が激しくて時折下りも入るので、その分登りは8%を越える厳しい勾配が多いのです。
ここのもう一つの特徴は見通しの良さ。
日本海から強い西風が吹き続けているせいでしょうか、背の高い樹木が少なくあちこちで視界が開け、さっきまで走ってきた道路を眼下に見ることができます。
激坂の波状攻撃で脚も心肺も削られてフラフラになってきた頃、何やら施設が見えてきました。展望台っぽいものがあるので、あそこがピークで間違いないでしょう。よっしゃあと少し!
・・・いやちょっと待て。見通しがいいから見えただけで、まだ結構遠くない?しかもゴール前で斜度上がってない?
先ほどの精神攻撃にもめげず、何とかピークまでやってきました。標高500m程度とは言え実に涼しく、風がさわやかに感じます。
南を見れば今まで走ってきた道を一望することができました。
北に視線を向けると津軽海峡に落ちていく山々と、そのはるか先に見えるのは北海道・・・ですよね。
ついにここまで来た、そんな達成感があります。
そしてダウンヒルもまた爽快でした。時折見える北海道の姿が徐々にクッキリしてくるのもワクワク感を演出してくれます。
龍飛に着いてとりあえず海沿いに行ってみると、カモメが堤防の上に並んでいました。残念ながら季節柄、凍えそうなカモメみつめ泣くことはできないのですが。
あんまり近づくと堤防の裏に隠れてしまうので、写真はこれが限界でした。
さて、龍飛に来たらぜひ通っておきたかったのがこの道、というかこの階段です。
そう、階段国道。竜泊ラインと並び、国道339号の知名度を大いに押し上げている立役者です。
なんでこんな道が国道なのかと言えば、道路行政上の都合とか、ほかに接続する道路が無いとか、そんな事情では全くなく、ぶっちゃけ観光目的です。
そして知名度目的の国道指定は大当たりで、龍飛の重要な観光資源になり多くの観光客が釣られてここを訪れています。もちろん俺もその一人なわけですが。
ちょうど降りてきた家族連れをやり過ごし、早速登坂を開始します。しかし100mも進まないうちに自転車で来たことを後悔しました。
もちろん押して歩いているのですが、狭いし急だし歩きにくい!一応スロープもあるのですが、右に行ったり左に行ったりでいちいち自転車を持ち換えるのも面倒です。
そもそもこんなところに自転車持ってくるんじゃねぇよ、ということなんでしょうけど。
しかしまあなんだかんだで登り切りました。意外と短かったな、早く終わってよか
まだ続きがあるぅぅぅぅぅ!
今度こそ、ようやく登り切りました。
まさか途中でフェイントをかましてくるとは思いませんでした、侮れないな階段国道。
そしてこの近くには「津軽海峡冬景色」の記念碑があります。
数ある演歌の中でも屈指の知名度がある曲ですし、特に2番はここ龍飛が舞台なので、いわゆる聖地巡礼の観光客も多数訪れるのでしょう。
ちなみに2番の歌いだしは「ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと」ですが、この竜飛岬には表記のブレがあります。
国土地理院の地図では「龍飛崎」となっているのでこれが正式な地名と見るべきですが、近くにあるのはホテル竜飛に龍飛埼灯台に龍飛岬郵便局。
竜なのか龍なのか、あるいは崎・埼・岬のどれなのか。見事なまでにバラバラです。
記念碑にはこれ見よがしにボタンがあり、押すと津軽海峡冬景色の2番が大音量で流れます。
迫力はあるが近所迷惑では・・・と思ってしまうほどの音ですが、考えてみれば近くにあるのは観光客向けの展望台や食道ばかり。住宅は少し離れてるので問題ないのでしょう。
聞き終わって俺が離れると、待ってましたと2人組がボタンを押していました。忙しいな石川さゆり。
今日のねぐらはホテル竜飛。この辺りでは唯一に近いホテルで、今どき珍しくなった団体温泉旅行も多数訪れている古き良き温泉旅館です。
正直言えばちょっとお高いのですが、まあたまには良いよね。
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