今回はこじつけと妄想で話が進みますので、細けぇことはいいんだよ!の精神でお願いします。
前回は、自転車を巡航させる際の抵抗について
a.空気抵抗
b.タイヤの転がり抵抗
c.ハブ、チェーンなどの機械的損失
d.上昇による位置エネルギー(登り坂の場合のみ)
この4つに加え、ホイール外周重量に起因する謎の抵抗(笑):X[W]があるらしい、というところまで書きました。
今回は、このXについて考察してみたいと思います。
前提として、自転車の運動を物理的に考えた場合、自転車の損失は空気抵抗・転がり抵抗・機械的損失の3つで説明できますのでXなんぞの出る幕はありません。にも関わらず、サイスポの実験ではその3つでは説明できない結果が出ていました。それはなぜか。
自転車というのは人間が漕ぐものであるため、数式では表現が困難な運動をしているから、だと俺は考えています。
いくらペダリングが上手い人でも機械のような等速円運動は出来ませんし、ペダリングの際にはどうしても体重移動が発生するので、自転車は多かれ少なかれ蛇行します。それによってホイールの回転運動は細かい加減速を繰り返しており、それによるエネルギーのロスがXなのではないか?
わかったようなことを書いていますが、この説に自信があるわけでもありません。ただ、サイスポの実験結果から想像できる原因がこれくらいしかありませんでした。
では、このXの計算を試みてみたいと思います。考察する上で、課題になったのは以下の2つでした。
① Xの原因は直進運動か?回転運動か?
② 速度の扱い
① Xの原因は直進運動か?回転運動か?
まずサイスポの実験に使われたアイオロスのリム重量を考えて見ます。公開されているホイール重量と、諸々のネタから、
アイオロスXXX:516[g]
アイオロス3:700[g]
アイオロス5:778[g]
アイオロス7:1058[g]
アイオロス9:1146[g]
であろうと推定しました。ドンピシャとは行かないでしょうが、ともかくアイオロス5とアイオロス9の重量差は約400gです。
一方、サイスポの実験でアイオロス9はアイオロス5より出力が12W増加していました。100g当たり3Wなわけですが、仮にこの出力増加が直進運動によるとしたら、ホイール以外の重量物、例えば人体の直進運動維持にも100g当たり3Wのパワーが必要になるはずです。仮に体重が60kgだとしたら1800W・・・ちょっとありえない数字ですので、直進運動が原因ではないと決め付けてよさそうです。
よって、Xは回転運動によるものと仮定して進めることにします。
② 速度の扱い
速度について検討した仮説は以下の3つです。
a.速度は関係ない
b.速度に比例する
c.速度の2乗に比例する
まず速度は関係ないとした場合、速度が0、すなわち停止している場合の説明がつきません。停止中は除外したとしても、100km/hでも0.1km/hでもXが同じだというのはやはり納得できず、a.は真っ先に消えました。
一番ありそうだと考えていたのは速度の2乗に比例する説です。何らかの理由による回転エネルギーの損失がXだと仮定しているわけですから、運動エネルギー(速度の2乗に比例する)に比例するのでは?とごく自然に考えていました。しかし空気抵抗との兼ね合いでこの説には矛盾があります。
一般に、空気抵抗は速度の2乗に比例します。ヒルクライムでは速度が遅く空気抵抗が少ないから軽量なホイールが有利である一方、平地レースはスピードが出て空気抵抗が大きくなるため重くても空力に優れるディープリムホイールを使うほうが速い、というのが一般的な認識でしょう。つまり、低速域では
X>空気抵抗
高速域では
X<空気抵抗
となるわけです。
もしXと空気抵抗のどちらも速度の2乗に比例してしまうと、この逆転が発生しません。これはちょっと受け入れられませんので、消去法でb.速度に比例するを採用することにします。
以上の2つより、謎の抵抗(笑):X[W]はホイールの回転運動に起因し、ホイールの慣性モーメントと角速度に比例する、ということになりました。数式で表すとこうなります。
では最後に、新たに登場した謎の抵抗係数を決めてしまいましょう。ヒントになるのはやはりサイスポの実験結果です。繰り返しますがアイオロス9はアイオロス5より出力が12W増加していました。謎の抵抗係数を20と設定すると、Xが13.1W増える計算になりちょうどいい感じと思われますので、20で決め打ちすることにします。
↓以上で決定した謎の抵抗(笑)を加味し、最終的なヒルクライムにおけるタイヤランキングがこちらです。(クリックで拡大します)
チューブラー最強は大差でCorsa Speed
2位以下に大差をつけたCorsa Speedが他を寄せ付けない圧勝。Vittoriaが世界最速と豪語するのは伊達ではないようで、200gという軽さもヒルクライムでは大いに魅力的。その一方、ネットのインプレを探していくとパンクしやすい・空気がすぐ抜ける・寿命短い・コーナリングもいまいち、と欠点もずいぶん多い模様。「ヒルクライムとTT以外では怖くて使えない」という文字通りの決戦タイヤのようで、使うには思い切りが要りそうです。
三強対決?決戦用クリンチャー
クリンチャーに目を向けると、Pirelli P Zero Velo TT、Continental Grand Prix SuperSonic、Continental Grand Prix TTの3つの数字が目を引きます。性能的にはほぼ差は無いと言ってよさそうですが、この中から俺が選ぶとすればGrand Prix TTでしょうか。Pirelliのタイヤはトレッド面に小石が付着しやすくそれが原因でのパンクが多いと聞いていますし、SuperSonicは以前使っていましたがデリケートすぎて扱いにくい印象でした。
大正義GP4000SⅡ
レースがある度にいちいちタイヤを取り替えるのは面倒なので、普段使いできるタイヤが欲しい。そんな要望にはやはりContinental Grand Prix 4000SⅡが最適でしょう。恐らく日本で最も信頼されているタイヤで、パンク耐性と長寿命は折り紙つきです。他にもVeloflex Corsa、Schwalbe One V-Guard、Pirelli P Zero Velo等がほぼ互角の性能を示していますので、この辺りから選べば後悔することは無さそうです。
おしまい
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