◆いよいよ20世紀も残りわずかとなりました。今世紀中にやり残したことがありませんか?今世紀最後の天文現象は12月13日~14日の双子座流星群、新世紀最初の天文現象は1月3日~4日のりゅう座流星群と10日の皆既月食です。これこそ本当の「世紀の天文現象」ですから、がんばって早起きして観察してください。
◆夏から秋の南の空で英雄ヘラクレス(ヘルクレス座)や天馬ペガサス(ペガスス座)を見つけることができます。皆さんはこの2つの星座が逆さまになっているのを不思議に思ったことはありませんか。ギリシア神話ではヘラクレスが女神ヘラの呪いを受けているからとされていますが、実はこの逆さまの星座はギリシア神話よりずっと昔から知られていました。
◆地球は地軸を中心におよそ24時間で1回転(自転)しています。その地軸を北の空にどこまでものばしていくと、地球から430光年彼方にある「こぐま座」の2等星ポラリスにあたります。夜空の星々は地球の自転によって時間とともに動いていますが、この星はどの季節であろうが一晩中見ていてもほとんど動きません。いつも北の空で動かないこの星を私たちは「北極星」と呼んでいます。ところが数百年もかけて観測し続けると北極星が動いていることがわかります。太陽や月の引力によって地球が揺すぶられる「歳差運動」のために、地軸は2万6千年ほどの周期で円を描いています。ですから北の方角を指す「北極星」と呼ばれる星は長い年月の間にまったく別の星に代わっていくのです。
◆私たちは星空を見る場所、つまり地球上のどの緯度で見るかによって星座の見え方が変わることを知っています。オーストラリアで見える南十字星は日本では見えません。さらに歳差運動による地軸の移動も星の見え方を変えます。同じ場所にいても星座の見える位置が変わってしまい、数千年前には日本各地でも南十字星が観察できました。数多くの星座が誕生したその頃、ヘラクレスは北の空で頭を真上にしていました。それが数千年の時の流れを経て地軸が動いたたために、南の空で逆さま星座になってしまったのです。秋の夜空に見えるペガサスが逆さまの姿で空を駆けているのも同じことです。
◆140世紀の未来、歳差運動により織り姫星が北極星になっています。そして日本では北の空に夏の大三角が一晩中見え、南の空にはあこがれの南十字星が輝いていることでしょう。